君は誰と幸せなあくびをしますか。/ 槇原敬之

 「2ndアルバムには名盤が多い」

 と言ったのは、中国の皇帝だったか、アケメネス朝ペルシャの詩人だったか(嘘) いや、個人的に好きなアルバムって、そのミュージシャンにとっての2ndアルバムなことが多いんですよね、昔から。これは不思議だ。

 ということで、「2ndアルバムを科学する」、もしくは単に「私の好きな2ndアルバムを紹介しよう」という、英語ネタがない日でも何かエントリが書ける企画をスタートします。いつまで続くやら。

 栄えある第1回目にご紹介する2ndアルバムは、

君は誰と幸せなあくびをしますか。

君は誰と幸せなあくびをしますか。

 槇原敬之の「君は誰と幸せなあくびをしますか。」です。

 1stの「君が笑うとき君の胸が痛まないように」と3rdの「君は僕の宝物」と並ぶ、「君」シリーズ3部作の1つです。彼の出世作「どんなときも。」を含むアルバムですが、きっと売り上げ自体は3枚目の方が多いんだろうなぁ。(これは他のミュージシャンでもよくある現象ですかね。) 当時聞いていたFM局(NACK5)のカウントダウン番組で、はじめて「どんなときも。」を聞いたときは、「すごい人が出てきたぞ!」と強い衝撃を受けたのを覚えています。

 アルバム全体を見渡すと、1stではバラバラだったそれぞれの曲の世界観が、しっかりとつながっている。3rdではまとまりすぎている感もある歌い方(声)も、まだいい意味で不安定。それが切なさを誘います。全体的にキャッチーな②④⑥⑧⑩の偶数曲が好きなんですけど、聞き込んでいくと奇数曲の世界にも引き込まれていきます。言うなれば偶数曲はASKA、奇数曲はCHAGE(たぶん大間違い)

 特に⑥「EACH OTHER」は、歌詞の世界も含めて秀逸。別れた男女のその後を男の視点から、そして時々俯瞰的に(と男が勘違いしているところが秀逸)描きます。「世界に一つだけの花」以降の彼らしいレトリカルな部分と、「SPY」の頃を思い起こさせるストーリー性あふれる部分の両方の可能性を感じさせる名曲だと思います。

 「すれ違い」がこの頃の彼のテーマか。「東京ラブストーリー」とか「あすなろ白書」なんて柴門ふみ作品を読みふけっていた頃の自分には、なんとなく重なる部分があって、どんぴしゃりでした。

 アレンジャーとしての細かいこだわりも感じられますが、ヒットして(いい機材が使えるようになって)音数が増えていってしまうその後を考えると、この頃のバランスが、何とも言えず好きです。

 彼がアマチュア時代にグランプリを獲り、デビューのきっかけとなった「AXIA MUSIC AUDITION '89」に、うちの兄貴もテープを送ってた(そして予選落ちだった)のは内緒の話。