THE 有頂天ホテル

 さっそく観て来ました。「ラヂオの時間」、「みんなのいえ」と作品を追うごとにステップアップしてきた映画監督・三谷幸喜としての自己ベスト作品だと思います。限りなく密室劇な雰囲気があるので、いつもの一幕劇を観ているようなドキドキ感が伝わってきました。TVドラマの「王様のレストラン」のイメージに近いかな。

 要所要所に小ネタを散りばめ、「1シーン1カメ」にこだわり、過去の作品とのリンクを匂わせているので、思わずDVDでもう一回観てみたい!と思わせる作りはさすが。登場人物も豪華で多彩。ぜいたくな使い方です。

 ただ、TVゲーム「ぷよぷよ」で一段ずつずらして積んであったのが、ひとつのきっかけでものすごい連鎖を呼び起こすようないつものあの快感は今一歩。なんかこぢんまりとつながっちゃった感じも否めません。もっとダイナミックにつながってほしかった。たたみ掛けるような笑いの連続を期待してしまいます。

 でもそれは作り手の方にばかり責任を押しつけることはできないと思います。演劇はなぜおもしろいってあの空気感というか、場の雰囲気がそうさせている部分も大いにあると思うんです。みんなが笑ってる雰囲気で一緒にあたたかい気分になっちゃう。そんな一体感が、巨大なシネマコンプレックスでは生まれにくい。

 演劇の場合、間とかネタだって、聞き手の反応よって微妙に変化していくモノでしょう。もっといえば公演中に手直しができるわけで。そう考えると「完成された作品」で(時には一方通行で)勝負して行かなくてはならない映画監督って大変。三谷さんも肌で感じているかも知れませんが。

 約4年かかった今作。次はもっと短いスパンで作ろうとしてるそうなので、またまた楽しみです。