ブラックジャックによろしく

ブラックジャックによろしく(13) (モーニング KC)

ブラックジャックによろしく(13) (モーニング KC)

 さすがに30歳になって、仕事も生活もいろいろ考えるようになった。だからだろうか、この本の「重たさ」が読み始めた頃と変わってきているような気がする。もっともレビューなんて、そのときの体調や環境にだって大きく左右されるもの。だからこそ、その時書き留めておきたい、と思うのだろう。

 某ラーメン屋で読み始めて、気がついたらお店に置かなくなっちゃって、漫画喫茶で読破。「がん編」と「精神科編」はここ1ヶ月くらいで読んだ。特に「がん編」は内容的にも衝撃的で、読み進めるのは正直辛かった。「精神科編」は先日読んだ「クライマーズ・ハイ」を思い出した。新聞社が舞台になっていた事と、その中で行われる同じような「決定」に、この漫画が社会を変えたがっている事を感じる。

 一方で、研修医斉藤の日常は少しずつ動いている。その変化は「社会」の中ではとっても小さくて、様々な病気に苦しむ患者たちの人生の陰に、ちらちらと見え隠れするくらい。今回のぼくのように単行本を通して読まないと、その変化に気づけないのではないか、とも思う。でも、その「小さな変化」こそが、この物語のキモであると思う。斉藤をこの物語のヒーローとするならば、これほどヒーローの「ありふれた毎日」を、ありふれたまま(でも意味あるものとして)描いた作品はあまりない。

 ぼくが「重い」と感じるのは、斉藤の「未来」だと思う。駆け出しの医者が悩み、苦しみ、思い描く「未来」の中に、30歳の自分が「同じようなもの」を見いだしているのだとすると、それはそれで途方に暮れてしまうのだ。