生徒の力で強くする部活動

 今日はいろいろあったのだけど、うれしいニュースがあったのでそちらの話を。

 3月まで面倒を見ていた我らが弱小バレー部が、今日の新人戦でついに大会初勝利をあげたそうです。ここ数年間、大会での勝利は一度もなかったので、本当にうれしいです。

 うちのブロックは小学校からクラブチームでバレーをやってくる経験者チームばかり。どこも強豪揃いです。そんな中うちのチームは経験者は毎年ほぼゼロ。しかも(ぼくも含めて)専門の指導者が来ることはほとんどなく、ずっと下位に甘んじてきました。0−25で負けたこともあります。それでも「大会で1勝」を目標に地道に練習をがんばってきて、やっと部活らしくなってきたなぁと思ったところで、ぼくの方が部を離れてしまいましたから、残してきた子たちの様子がすごく気になってました。

 3年生が出た夏の大会では、デュースにまでもつれ込む大接戦ながら惜しくも敗退。2年生チームになったこの秋。くじ運良く、同じように経験者のあまりいない学校と対戦することができ、こちらもフルセットにもつれこむ大接戦の末、なんとか初勝利をあげたようです。

 その場に立ち会えなかったこと、ベンチで指揮できなかったことは残念ですけど、こうやって自分がいなくなったあとも、生徒ががんばってくれているということが、何よりうれしいです。

 部活動においては、顧問教師の影響力が大きいです。でも、ぼくはそういうのってどうなのかなぁとずっと気になっていました。力のある先生が顧問に就くと一気にチームが変わります。あっという間に強いチームにしてしまう先生を見ていると、素直にすごいなぁと思います。でも、ぼくは(優れた競技指導力がないこともあるけど)そういうやり方で部活を変えていくことが、なんとなくできないのです。

 あくまで生徒の力で、部活を強くしたいと思うのです。

 だからぼくが顧問に就いても、一気にやり方を変えません。その年の3年生と話し合って、前の年から1つか2つ新しいことを取り入れて、ちょっとずつ前に進みます。「こういうやり方があるよ」と示したり、「どっちがいい?」と考えさせ、選ばせます。もちろん、ぼく自身はこういうチームになって欲しい、ということずっと伝え続けます。

 ゆるゆる状態でやっていた部を引き受けたりした場合、「部活らしく」なるまでに当然時間はかかります。優れた指導者でもなんだかんだで自分のチームを作るのに3年はかかりますが、ぼくの場合もっとかかります。歯がゆく思うこともしょっちゅうですが、そういうやり方を選んだのは自分なので仕方がないです。我慢我慢。

 たいてい4年目くらいに、やっと自分が望むようなマインドを持った部員たちが育ってきます。今回もそう。今の2年生は、まさにそんな学年かも知れません。だからこそ、彼女らが大会で勝てたことが、本当にうれしいんです。それは、4年前からずっと関わってきた(もしくはその前の世代の)先輩たちがひとつずつ積み上げてきた結果としての一勝だと思うからです。

 今回ぼくのあとは、さらに未経験の方に顧問をお願いしました。それでもこうやって大会で勝つことができた、ということに価値があると思います。「すごい顧問が来たから急に強くなった。でもその人がいなくなったら急に弱くなった」っていうのが、あまり好きではないのです。それはやっぱり、子どもの力じゃなくて、教師の力だから。

 日本の部活動って、そうやって「教師の指導力比べの大会」になってしまっているように思います。そして(特に女子の場合)どこまで無理して練習をやらせたかという「練習量比べの大会」になってる。

 本当に子どもの力量や努力を比べるなら、極端なことを言えば、同じように支援されて、同じ時間練習した生徒たちが対等に戦って、こっちが勝った!負けた!って方がいいなぁと思うのだけど、そんな風に考えて部活やってる人って、あんまりいないんだろうなぁ。

 部活動を熱心にやられている先生からすれば、「甘い!」と言われるでしょう。「勝つ喜び」や「絶対に勝ちたいという気持ち」は厳しい練習や圧倒的な練習量でこそ得られるのでしょうし、約束事やマナーなどは顧問が厳しく指導しなくてはならないものでしょう。そうわかっているからこそ、これまで迷ったり悩んだりしながら部活動の指導をしてきました。

 きっとまた現場に戻っても、悩みながら関わっていくんだろうなぁ、と思います。でもその中で、ぼくらしい関わり方を模索していくしかないのだろうなぁ。なにせ、プライベートを削ってほとんどボランティアでやっているような(それでいて、学校教育や生徒指導の核になってしまいかねない)仕事なんだから。

 とりあえず今夜は、明後日の二次予選での健闘を祈ってささやかに祝杯します!