COSMONAUT / Bump of Chicken

 少し前にMr.Childrenの新譜も買いましたが、こっちの方がぐさりと刺さったので、こっちをレビューしてみます。すっかり文具&音楽&デジタルガジェットなブログになりつつあるけど気にしない(w

COSMONAUT

COSMONAUT

 いい意味でも悪い意味でもすっかり安定してしまったMr.Childrenに比べて、Bumpの魅力はその「不安定さ」にあると思っています。普通それなりに売れてしまったバンドは音も厚くなって、アレンジも壮大になって、歌い手の声も太くなる印象があります。まぁ、レコーディングにお金がかけられるようになるし、演奏だって上達するし、声だって鍛えられて強くなる。それが普通なんだけど、駆け出しの頃の「あやうさ」というか「頼りない感じ」みたいなのに惹かれてしまうことが多い私としては、結構それって残念な成長だったりするんです。だからぼくの場合、「たいていのミュージシャンは2ndアルバムが神、あと残念」みたいな見方をしてしまいがちです。

 でもBumpって不思議なことに、アルバムの枚数を重ねても、そういういい意味での「不安定さ」が消えないんですよね。音がキラキラしているように感じるんです。

 ひとつは(これまたぼくの好みではあるんだけど)変拍子を多用しているところにあるのでしょう。リズム的にまさに「不安定」な世界を創り出しています。言葉の詰め込み方も、ジェットコースターのように自由にスピード(というか密度)を上下させながら、変化させているのが印象的です。

 歌い方については「ユグドラシル」の時にもひとつの変化があったように思うけど、今回はさらにいろいろな歌い方というか、声の飛ばし方を試しているように思います。面白いのは、その声が(というかメッセージが)てっきり音楽を聴いている自分に向けられていたように思っていたのに、ふと「ぼく以外の誰か」に向けられていたんじゃないか、と思わされるような瞬間があること。(「66号線」など) それこそ「不安」というか「残念」というか「怖い」気持ちになったりします。こういう風に、聞き手の感情を弄んでしまえるボーカルって、あんまりいないような気がします。

 歌詞については、シングル曲もアルバム曲も「ひとつの物語」におさめてしまった前作に比べると、今回の方が自由度は大。その分、あまりイメージにとらわれすぎずに1つの楽曲として楽しめる「余地」が大きくなった気もします。

 テーマというほどではないけど、いくつかに共通しているのは「遠い向こう側からの視線」が存在すること。一番わかりやすいのはシングル曲「宇宙飛行士への手紙」のPVでしょうか。

 自分が見つめているものからは、自分も見つめられている(かもしれない)という当たり前のことに、改めて気づかされてドキッとしてしまいます。そして「遠い」のは必ずしも「距離」だけではなくて、「魔法の料理〜君から君へ〜」のように「時間」だったりすることもあるのも興味深いところ。彼らの「不安定さ」を支えるのは、ずっとテーマにし続けている「宇宙」が持つ「未知」や「絶望的な距離」だったりもするのかもしれません。

 ということで、この「安定した不安定感」は、さすがです。そういう意味で、期待以上のアルバムでした。

 ああ、こうやって好きな音楽の歌詞についてああだこうだ書くのって楽しいなぁ。所詮自分の好きなものについて後出しで語ってるんだから、好きなように話を展開できるんでただの自己満足なんだけど、自分の好きなものをそうやって解析してみることで、「そういうものが好きな自分」が見えてしまう時があって、楽しいような恥ずかしいような。

 とはいえ、「好きな音楽はなんですか?」と聞かれると、自分という人間を晒してしまうようで、「え、いろいろ」なんて答えてしまう自分が中2みたいで恥ずかしいんですけど。