アクティビティー考

 世の中の人たちがどんなキーワードでこのブログにたどり着いているのかが興味深くて、アクセス解析のキーワードをよくチェックします。

 年間を通していつも検索されている「音読」みたいな語もあれば、「比較級」「関係代名詞」などのように文法事項に関わる言葉は、それが指導される時期が近づくと検索ヒット数が増えてくるので、「みなさん、そろそろ受動態の準備にとりかかっているのだな」と世の流れを知ることができて、(現場を離れている今の立場では特に)面白いです。教育実習シーズンになると、さらに切実感が伝わって来ます。

 さて、そんな文法項目とセットで検索されているのが、「アクティビティー」という言葉です。「比較級 アクティビティー」みたいに組み合わせて検索されています。少し前でいえば「言語活動」とか「ゲーム」だったんでしょうけど、最近はすっかりこの「アクティビティー」が多いです。

 文法項目とセットということは、きっと比較級を導入して、説明して、パタンプラクティスをしたあとに、定着を図るためにおこなう「ヴァーチャルに使わせる活動」を念頭に置いているのだと思います。しかも「ゲーム」ではなく「アクティビティー」という語を使うのは、ある程度コンテクストを意識した活動をイメージしているのでしょう。

 でも、特に中学校の教室で見かける「アクティビティー」は、「ゲーム」時代とあまり変わらないものが多いように思います。そして、ネットでアクティビティーを検索している方々のイメージしているものも、きっとそういうものなんじゃないかと思います。あくまで「ややコンテクストがあるパタンプラクティス」を抜けていない気がします。

 だからダメだ、と言いたいんじゃないんです。ぼくはそれでいいんじゃないかと思うんです。というか、教室ではそれが限界でしょう。結局「数多く口にさせる」ことが目的である以上、コンテクストでさえ「意欲を刺激するツール」でしかありません。それなのに、「アクティビティー」をやって、「もう使わせたから次」ってなっちゃうことの方が問題かなぁと思うんです。

 「実際の使用場面」は、文法シラバスに沿って進む「アクティビティー」なんかとは別に設定して行く必要があると思います。私の場合は、「2S3Q」などの会話活動や、「COSMOS」などのライティング活動でその機会を作っているつもりです。

 なので、特定の文法項目を定着させるための「アクティビティー」を求めて来た方には申し訳ないのですが、このブログにはあまりそういうものが紹介されていません。

 昔は新出文型が登場するたびにいろいろなものを考えたのですが、それってあまりにも効率が悪すぎる。一生懸命考えても1回きりですからね。それよりは、「どの文法項目でも使える仕組み」の方にぼくの興味は移って行っちゃったんです。だから「教科書音読シート」とか「カキトリン」とか「24」とか、汎用性のある活動やワークシートが生まれるようになりました。

 だってその方がやり方を毎回時間をかけて説明する必要もないし、生徒も前の自分と比較して成長を(あるいは退化を)実感することもできるし、何より準備するのに効率がいいじゃないですか。ターゲットセンテンスを数多く言わせたい、ということであれば、「ぐるぐるメソッド」のような発音指導であっても、「正確さ」という負荷(タスク)が存在するために立派な「アクティビティー」として機能することも実感しています。

 もちろん、文法項目によってはいつもやるようにしている活動もあります。過去進行形を扱う時は決まって「犯人探し」をやるし、There isを扱う時は「間違い探し」をやります。それは、文法の持つ機能が限りなくわかりやすく使用場面をイメージできるからです。それはやるけど、あくまで「コンテクストのあるパタンプラクティス」だと割り切って使っています。それが生徒の口から(ペンから)出てくるようにするには、別の手立てが必要でしょう。

 「トレーニング的な活動」と一緒に「両輪」として英語の授業を支えるべきは、個別の「アクティビティー」ではなく、もっと文法シラバスから自由な「相手の存在する活動」であるべきだと思っています。トレーニング的な活動を1.0とした時に、ぼくはそういう活動を2.0的な活動と呼んで、こだわって考えてはこちらで紹介している次第です。もちろん発達段階に応じてそのバランスや扱い方は様々でしょうけど。

 1授業を盛り上げる(場合によっては「しのぐ」)ためだけに個別のアクティビティーに凝りすぎるのはもうやめてみませんか。たぶん小学校ではそういったアクティビティーが主流になりつつある気もしてちょっと心配なのですが、少なくとも中学校などでは、より汎用性のある2.0な活動がシェアされていけばいいなぁと思っています。