書くための下位技能としての「書写」

 遅ればせながら大修館『英語教育』6月号を入手。

英語教育 2012年 06月号 [雑誌]

英語教育 2012年 06月号 [雑誌]

 今月号は「英語で表現する力」特集なので、当然「書くこと」についてもいろいろな人が書いてくれてます。そういえば、少し前に国研が発表した「特定の課題に関する調査(英語:「書くこと」)の調査結果をダウンロードしたものの、なんだかんだ全然目を通せてなかったので、この特集記事で概要を確認。

 面白かったのは、根岸先生による「書くための下位技能」についての考察。特にコピーイングのお話。

 国研の調査問題にも「正しく書き写す」という問題が出題されたけど、こういうコピーイングとか書写、視写と呼ばれる活動は、これまであまり重要視されてこなかったように思います。中学校1年生の1学期中間テストくらいではよく「正しく符号を使えるか」とか「4線に沿って書けるか」という問題を見かけるけど、その後は全然指導も評価もしていない気がします。

 「話すこと」につながると信じて何年生になっても「音読」の練習や評価をするのと同じように(そしてすぐには読めるようにはならないことも経験的に知っているのだから)、「書くこと」につなげるために「書写」活動を根気強く継続していくべきなんじゃないかと思っています。

 ぼくの授業で言えば、「カキトリン」という音読筆写練習がそれにあたる活動になります。(参照:「カキトリン(はじめに編)」)もしくは、毎時間授業の最初にやっているちょっとしたディクテーション活動も同じ。共通しているのは、文法的に正しく、できれば覚えておくとあとで役立ちそうな英文(中学生の場合は教科書の基本例文)を、正しく、できるだけ速く書き取る、ということです。書くための身体的インプット活動、というイメージです。

 もうひとつ気になったのは符号の扱いについて。

 この調査で出題されていた、「英文に適切な符号等を追加して書き写す問題」は、結構難しいように思います。特集の中で根岸先生も触れていらっしゃいましたが、他人が書いた英文にあとから符号を追加するという作業は「ある程度高度な認知的な判断も求めて」いると思います。英語の文構造に関する知識も必要になるのは当然として、もっと原始的なレベルでの認知能力にも依存していそう。そういう意味では、書写などの活動を通して単純に目が「英語の文字に慣れている」ことがアドバンテージになる可能性もあると思います。

 教師はピリオドやカンマなどが抜けているだけで生徒の作文を減点してしまいがちですが、最近の私は「ピリオドやカンマが書けているだけで点がもらえる小テスト」を実施しています。前述の毎時間のディクテーション・テストでそういう採点法を採り入れています。教師が読み上げた英文を書き取って、書けた単語+符号の数が点数になる仕組みです。(What are you reading, Tomoko?なら7点もらえます!)

 書き忘れたせいで減点され、ピリオドやカンマに苦々しい思い出を共有させるより、忘れなかったことでご褒美がもらえるポジティブなイメージを符号につけてあげたほうがいいかな、と思っています。効果があるかどうかは、1年後くらいの生徒の英作文を楽しみに。

 少し前の記事ので図に示したライティング活動の中で私が一番下の位置にプロットしたような書くための下位技能としての「書写」活動が、もうちょっと見直されて広がっていくといいな、と願っています。