公立高校入試にはいろんな難易度の問題を出して下さい

 さて、夏休みに入りましたので(あんまり忙しさは変わりませんが)前々から書きたかったことを書いておきます。県の高校入試問題についてです。

 先に結論から言っておくと、問題の難易度をもっといろいろバラつかせて欲しい、ということです。今の問題は、あるレベルの問題に偏っている傾向があると思うんです。

 埼玉県教育委員会、というか埼玉県立総合教育センターでは、公立高校入試のあとに(おそらく抽出で回収した)データをもとに、入試問題の分析をして、ウェブで公開をしています。
>>平成24年度入試結果:英語(PDFファイル)
 なので、このデータを使って、どんな難易度の問題が、何問くらいずつ出題されているのか、分析してみました。(ただしこの作業を実際にやったのは、今年の冬ですので、データは23年度入試のものを使用しました)

 難易度は「通過率」という数値で考えてみます。部分点をもらえる問題もありますので、

という計算式で出しています。総得点のうちどれくらい取れていたか、ということですね。

 で、その問題ごとの通過率をヒストグラムにしてみると、こんな感じ。

(縦軸は出題数、横軸は通過率10点刻み)
 なんとなく山になっていて、真ん中の通過率6割くらいの問題が少し多め、といった感じですね。

 なんかこういう「山」を見ると、正規分布を思い浮かべちゃって「バランスいいんじゃね?」とか考えてしまいますが、あらゆるレベルの生徒が同一問題を受験する公立高校入試の問題としては、果たしてどうなんでしょうか?

 実際にはもう少し細かいデータがないとハッキリとは言えませんが、「中くらいの難しさの問題がたくさんある」ということは「中くらいのレベルの生徒を弁別する問題はたくさんある」ということだと思います。反対に言うと、「0点か5点かを弁別する問題」や「100点か95点かを弁別する問題」は少ないということで、そういった層がターゲットとなる高校なんかは、この問題で合否を決められるのかな、と思ってしまいます。つまり、公立高校入試問題としては、このヒストグラムが横一列に並ぶくらいでもいいと思うんです。

 どうして高校の先生からそういう声が聞こえてこないのかも不思議ですが(別に中学校教師の耳に入らないだけか…)、入試に生徒を送り込む中学校教師としても、これは切実な問題なんです。

 これまで英語の勉強をサボっていて苦手にしている生徒が、入試を前にして「しょうがない、少しは英語でも勉強するか」と思った時に、「じゃあ、まずこれをやっておこう。10点は確実に取れるよ」と言って勉強させてあげられるような問題が今の入試問題にはないんです。

 数学にはそういう問題があります。最初の問題は正負の計算だったりすますので、そういう問題は通過率も90%を超えてきます。ヒストグラムも英語に比べれば平らで、まんべんなくいろんな問題が出題されていることが伺えます。

 実際、数学の先生方は冬休みに苦手な生徒を集めて正負の計算を特訓してたりして、入試後にも「1番の問題はできた!」と嬉しそうに報告する苦手な生徒の姿もよく見かけます。これって、とても教育的だと思うんですよね。

 読解問題だってやたら長文化してますけど(A4版ぎっしりの英文を2題)、むやみに長い文章を1つか2つだけ読ませるより、30語くらいの文章から500語くらいの文章までいろいろ取り揃えている方が、生徒の読解能力を測るチャンスが単純に増えると思うんです。短めの文章だったら挑戦してみる生徒だっていると思いますし。

 今の本県の英語の問題は、正直カッコつけ過ぎです。きっと「テストでもコミュニケーションの場面を意識しよう」とか「本当に長い長文を読ませたい」とか「他県より一歩先んじた問題を」とかそんなことを考えてるんだと思いますが、そういう頑張りは、入試があくまで生徒の弁別を第一の目的としている以上、優先順位の高い問題ではないと思うんです。それより、少しでも適正に生徒の現時点での能力を測れる問題であったり、そのテストに向けて生徒が努力したくなるような波及効果のある問題を作るべきです。

 こんな季節はずれに入試問題について書くのは、きっと今くらいに冬の入試問題を作り始めるんじゃないかなぁと勝手に考えて、何かの機会にこういう「願い」が入試の「中の人」の目に留まらないものかなぁと思ってのことです。

 奇しくも今年は3年生担任を仰せつかってますので、少しでもよい問題になるようにと、なおさらに願ってしまうのです。