「三人称で自分史」その後(1)

 意外と反響の大きかった「三人称で自分史」ですが、少しずつ進めています。20年後、35歳になった自分を、他人が紹介する設定で三人称で書く、というなんだかややこしいタスクですが、実際生徒たちも結構苦しみながら書き始めました。

 何回かに分けてネタ決めのために少しずつ時間をとった後、今週は実際に執筆開始しました。好き勝手書き始めると収集つかなくなるから、まずは5文でダイジェスト版「自分史」を書くことに。特にワークシートは使わず、意味順ノートに書き始めました。

 1文目は「20年後の自分が何者なのか」ということで、現在形で簡単に紹介。教科書本文に登場した"Stevie Wonder is an African-American musician who is known to everyone."のイメージ。実際、この文をうまくアレンジしてる子も結構いました。

 2文目は幼少期のこと、3文目は中学生時代のこと、という縛りで、原則として"When he was a little boy,..."のように書き出させます。こちらは当然過去形で書きます。

 4文目は自分の「転機」を紹介させています。「現在(35歳)の状態になるきっかけ」を過去形で書きます。この文は場合によっては、幼少期のエピソードに組み込まれるかもしれないし、中学時代よりあとに入るかもしれない。実際の順番は、あとでよく考えて並べ替えるのでとりあえずは気にしません。

 5文目は最近の出来事を紹介。あ、「最近」って、20年後の話ですよ。現在の職業や立場になった今、具体的にどんな活動に取り組んでいるのか、近況を伝えます。こちらも原則として過去形ですね。もちろん「習慣」を述べるなら現在形になりますが、こうやって各自が書く内容に合わせて時制を考える練習としています。

 今日の時点で、まだ5文書けてない子も多いですが、一度ノートを集めて目を通しました。まだネタが明確に決まらずに書き出せていない子も多いので、ネタ決めワークシートの段階で一度集めてチェックしてあげるべきでしたね。この学年の子たちは(少なくともこの1年間は)いわゆる「自己表現」をあまりさせてきていないので、ネタ決めには少し戸惑いがちかもしれません。今後、個別にフォローすることになりそうです。

 一方で書けている子の作文は、なかなかおもしろいです。

 私は一般的な話として、例えば1文目の「現在の状況」と3文目の「中学生時代」は何らかの関連があるといいね、と説明しましたが、まったく関係のないことを書いている子がいて「うーん」と思ってたのですが、4文目の「転機」で、一転してその職業に近づくエピソードを持ってきてました。具体的に言うと、現在の状況は「医者」なのに、中学時代は「野球部」のエピソードを書いてる。しかし彼は「高校時代」に怪我をしてしまい一度挫折するが、医者に助けられ感激し、医師を志す、というストーリー。これはなかなかですよね。

 こういう風に「ギャップ」をうまく使っている生徒が何人もいてびっくりしました。このへんは、まず最初にダイジェスト版を書いて全体のディスコースを俯瞰させたおかげかな、とも思います。こういう発想を、うまくまわりの生徒とシェアさせていきたいです。

 さて、このあとの展望としては、当然この5文を「トピック・センテンス」として位置づけ、それぞれ後ろに4文くらいずつ書き足して「パラグラフ」にふくらませていきます。果たしてうまくいきますかどうか。また追々指導の経過を報告させていただきます。

 そういえば、全然関係ないんですけど、1月のあたまに机を整頓しました。

 おかげで広大な作業スペースが生まれたのですが、不思議なもので、物理的な作業スペースがあると、心のスペースや脳内の認知リソースにもゆとりが生まれるようで、「ノート集めて点検しようかな」なんて考える心理的なハードルも低くなる気がします。今日は気持ちよくノート点検ができました。

 なんとか維持したいものです。