ご報告が遅くなってしまいましたが、先日20日におこなわれた1月例会の振り返りです。
今月は、現在埼玉県の長期派遣教員として慶應大学大津由紀雄先生の研究室で学ばれている、杉戸町立杉戸小学校のW先生をお迎えして、小学校外国語活動を考えました。先生からは、来月京都で開かれる全国小学校英語活動実践研究大会の「プレ発表」という形で、お話いただきました。
お話の中で一番印象的だったのは、外国語学習における「楽しい」と、他教科で目指している「楽しい」に少し差があるというお話。確かに理科や社会の授業では何か刺激的な演出によって「楽しい」と生徒を惹きつけた先には、科学的な仕組みや歴史や地理のつながりを知ることで、知的に「楽しい」と感じさせるプロセスが設定されています。今の小学校外国語活動で、果たしてそういったプロセスを用意できているかというとちょっと疑問です。外国語活動を入り口に、言葉の仕組みや外国語との違いなどに気づいて、面白がってくれる子が育ってくれたら嬉しいなぁと感じました。
W先生がその中で期待していたのはやはり国語教育との連携。文法を明示的に教えるわけでなくても、言葉を対比したり例示したりすることで、日本語の中でも違いや共通点を見つけたりする経験をしておくことが、中学校入学以降の「素地」になるのではないか、というご提案でした。とても興味深いでお話で、参加者からも率直な意見や質問がたくさん出て、「プレ発表」としては大成功だったと思います。
W先生、そしてご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。
蛇足ですが、その他お話を聞きながら考えたことを連々と。ひとつめは「ことばへの気づき」の学習指導要領上での位置づけについて。
小学校外国語活動の「目標」は
外国語を通じて,
(ア)言語や文化について体験的に理解を深め,
(イ)積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,
(ウ)外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら,
コミュニケーション能力の素地を養う。
となっていますが、W先生や大津先生がおっしゃるような「ことばへの気づき」はまさにこの(ア)の部分に該当すると思います。これって、中学校以降の「英語」学習の枠組みでは、同様に「言語や文化についての知識・理解」につながります。
小学校外国語活動って、一応「スキルを教えちゃダメだ」というお達しで「技能」や「理解」へのアプローチを(少なくとも公式的には)否定されているわけで、大津先生がそこを突いて攻めてきてるのが興味深いです。そして、この部分って、実は中学校の英語科教育の中でもあまり研究されていないというか、実践が乏しい分野な気がします。たいていの「研究」発表や実践発表は「表現」や「理解」に関するものが多いですもんね。そいいう意味で、いろいろ示唆を得られるお話でした。
もうひとつ。
こういうのって外国語活動の軸に位置づけるより、それこそ最近のお上のBuzzワードである「言語活動の充実」に関連付けて全教科・領域的に取り組んだほうが、面白いし相性がいいように思うのですが、大津先生はあまりそこには切り込まないですね。それよりも外国語活動に「ブレーキ」をかけることにターゲットを絞ってらっしゃるのかな。
各教科での「言語活動」というと、グループでの話し合いや全体の前でのプレゼンみたいな「華やかな」実践ばかりになりそうな予感もありますが、そういった「発表」や「表現」を下支えする母語そのもののちょっとした「違い」(それこそ助詞ひとつでニュアンス変わるでしょ、みたいな)なんかを、考えるような機会になると思いますし、原則として全教科を教える小学校では特に、学校全体で取り組みやすいテーマだとも思いました。
つい先日、地域の小学校での外国語活動の授業を生で見る機会もあり、色々考える一週間になりました。