どんな生徒でも自力でできるワーク

 少し前からテスティングや教材に強い関心を持つようになりました。授業ではいろいろ工夫をしているつもりですが、生徒が授業外で自力で英語にふれる機会が思いのほか多く、その質が生徒の伸びを左右するように思うからです。なんだかんだ生徒の目標となっているテストや、宿題等で全員に提出させる副教材などは、やはり波及効果が大きいな、と感じます。

 そんな中、これまでも教科書準拠のワークを買ってもらい、授業中やテスト前に活用してきましたが、少し前にこんなことがありました。

 提出されたワークを点検していたら、すべて赤ペンで書き込んであるワークが1冊ありました。英語がすごく苦手な生徒のワークでした。聞いてみると、「自力でやってみたけど全部わからなかったので、間違い直しとして解答を赤で書き込んだ」というのです。これは胸が痛みました。その子はいったいどんな気持ちでその作業をしていたんだろうと考えると、もっといいワークはなかったのかな、と教材を選ぶ側の責任を考えてしまいます。

 ワークに限らず、多くの教材における「英語の問題」というのは、「知っているか・いないか」「覚えているか・いないか」を問う問題が多いように思います。というか、そういう問題ばっかりではないでしょうか。知ってれば書けるし、知らなければ空欄。考えて書いたけど違っていた、という生徒ももちろんいるでしょうが、解答を見て、「なんだそれか」で書き写して終わり。紙のワークでは自己採点に限界があるので、「もう一度考える」ということも難しいです。

 これがワークの限界なのかなぁ? どんな生徒でも自力でできるワークってないのかなぁ? そんなことを考えていたら、面白そうな教科書準拠ワークが正進社さんから新刊で出るみたいです。その名も、『エイゴラボ』です。

 私がこのワークを一足先に知ることができたのは、このワークの中の表現問題(ライティング問題)の作成をお手伝いをさせていただいたからです。そのライティング問題についての紹介はまた別の機会にします。それより、このワークが面白いなと思うのは、今言っていたような「どんな生徒でも自力でできる仕組み」がちゃんとあるということです。

 簡単にいえば、答えは同じページのどこかにあるので探したり、選択肢が示されていたり、並べ替え問題が中心だったりと、苦手な子が全く手が出ない、という問題が少ないと思います。

 例えば不定詞の問題だったら、こんな感じ。

 まずは動詞の原形を確認(しかも右に選択肢がある!)、そしてそれにtoをつける形を練習してから、文の中に組み込んでいく、というスモールステップが組まれています。最初の一歩目が選択肢になっていることで、「スタートできない」という生徒を減らすことができます。こういう配慮って、今まであまりなかったように思います。

 そして、次のページでは、具体的な場面でその表現がどう使われるかを考えるのですが、ここの日本文がすごくくだけていて、本当に場面をイメージできて面白いんです。イラストもいいですよね。

 でも、あまりにくだけていると、苦手な子は日本語と英語の距離がつかめずに英文を作るのが難しくなっちゃうのですが、そこにはちゃんと青字の語順ガイドがついているわけです。うーん、親切。ちなみに下の問題では、語順ガイドがもう少しざっくりになっていて、得意な生徒にとってもチャレンジングな問題になっています。

 知っているかどうかではなく、どれを使うか、どう並べるかを考えるワークって、今までなかったように思います。この間このワークを見たある先生は、「このワーク、俺の授業プリントに似てる!」と言ってました。確かにそうですね。私も自分でプリントを作るときは、こういう感じになるなぁと思います。

 1セクションで4ページ構成ですので書き込むスペースはゆとりがありますが、4ページと聞くと多く感じてしまう生徒もいるかも知れませんから、最初の2ページは授業で扱い、残りの2ページは宿題にする、といった使い分けもいいかも知れませんね。苦手な生徒でも負担感なく取り組むことができると思います。

 ということで、他にも面白い点がたくさんあるワークですので、今後何回かご紹介をさせていただければと思います。