リアルに英文を書く体験ができるワーク

 さて、新刊の教科書準拠ワーク『エイゴラボ』の紹介記事が続いてますが、肝心の私が担当したライティング問題のご紹介をまだしていませんでしたね。

 ワークのライティング問題を担当させていただくことになり、改めてこれまでのワークの「表現問題」を見てみると、要するにターゲット文法を使った例文の名詞のところを自分に関係する言葉(好きなもの・したいこと)に置き換えて書いてみよう、という問題ばかりでした。いわゆる「自己表現」なんですけど、これって本当にワークでやる必要があるのでしょうか?

 それってこの間の記事で書いた「お肉とお皿」の喩えで言えば、お皿はもう用意してあるから、そこに好きなお肉を盛りつけてみよう、ということになると思います。でも「表現する力」を身につけるために練習するのであれば、「このお肉にぴったりのお皿を選んで綺麗に盛りつけてみよう」の方が大切だと思うんです。

 もちろん、文法シラバスで並んでいる検定教科書に準拠してますから、そのページで使って欲しい文法事項(お皿)は決まってはいます。だからあくまで擬似的にはなりますが、それでも自分でお皿を選んだような感覚を体験させてあげる必要があると思ったのです。

 ということで、ぼくが作るワークのライティング問題では、お肉となる内容語の部分をこちらから提示して、それをうまくターゲット文法に乗っける練習をさせてみることにしました。そうなると、和文英訳的なものも増えてしまいますが、それだけではなく、提示された情報から自分で選択して内容を決めていくような「自己決定」の仕組みを意図的に設定したつもりです。

 また、2文以上書かせていますが、ターゲットとなる文法事項を使って書く文だけでなく、既習の表現を使って書く文も意図的に織り交ぜています。前述のように、「不定詞のページだから不定詞使うんでしょ」っていうライティングばかりしていても、自律的に英文が書けるようにはならないでしょうから。自分で「お皿」を選ぶ練習が、できるようになっています。

 ということで、実際の問題を見ていただきましょう。

 

 

 選択肢を示す際も、「レシート」とか「メニュー表」とか「アンケート」とか「グラフ」みたいに、リスト化されていることが必然的であるものを、できるだけ選びました。

 もう1つこだわったことは、「書く場面」です。これからの時代の英語ユーザーである中学生が英語を読み書きするのは、やっぱりインターネット上が多いのではないかと考え、LINEやfacebookのようなSNSに投稿するスタイルにしました。これまで作文問題って「スピーキングの代替としてのライティング」って感じのものが多かったけど、SNSのチャットを書くのであれば、「会話を書く」ことも自然なことに思えます。

 

 また、amazonレビューや食べログのような「レビューを書く媒体」なども取り入れました。レビューを書くという行為には、「読み手」を意識して「どの商品を」「勧める/勧めない」といった「自己決定」と「書く目的」が自然に存在するんです。目的もなく「自分の好きなもの」を書かされるより、主体的に取り組めるのではないかと思います。

 こうやって、書かせる内容をある程度コントロールするメリットは、「自己採点のしやすさ」にあります。特に英語が苦手な生徒は、これまでのワークをやる際、自分が書いた英文が合っているのか間違っているのか解答を見ても判断できませんでした。だからこの表現問題を飛ばして(やらないで)提出してくる生徒も多かったです。でも、このワークなら、模範解答として解答例を示すことができます。

 ちなみに、先日『エイゴラボ』を見てくださったある先生は「自己表現させる部分が少ない」とおっしゃっていましたが、その先生は、ワークに書かせた生徒の自己表現を先生自身が添削してあげているそうです。そういう先生であれば、これまでの自己表現問題でもいいんでしょうね。でも、それだったら、別にワークじゃなくて、ノートに書かせることもできると思います。私としては、ワークの中のライティング問題の役割をもう一度考えなおしてみた結果としてのこの問題なわけです。

 ということで、『エイゴラボ』は「リアルに英文を書く体験ができるワーク」になっていると思います。見本をお手にとってもらえると嬉しいです。