AIE 教育に広告を

 昔から、広告が好きでした。

 CMのドラマちっくな展開が、チラシのデザインが、たった1行で胸に刺さるキャッチコピーが、昔から気になる性分でした。総合芸術と言えそうだけど、あくまでビジネスの手段、という不思議な立ち位置も好みでした。中でも、ことばで人を動かすコピーライターとかCMプランナーとかに憧れてました。当時は『広告批評』なんかを愛読してましたね。

 だから大学4年生になると、広告代理店の説明会を回りました。当時は就活の時期が4年生になってからでしたから、就活のピークがちょうど教育実習の時期と重なり、泣く泣く電通の1次試験をすっぽかしました。ということで、ぼくの中では、「電通を蹴った男」ということになっていますw

 なぜか英語教師になってしまった今でも、何かを書いたり、表現したり、考えたりするのが好きです。よく考えてみたら、英語に興味のない生徒を振り向かせ、覚えておいてもらえるフレーズを考え、捨てられないプリントを作り、最終的にこちらの活動に巻き込んでしまう、っていうのは、そのまま「広告」業界のお仕事ですね。代理店社員として、「英語」という商品を売り込んでいるわけですから。

 さて、そんなわけで結果として広告業界に進まなかった自分にとって、(『広告批評』が廃刊になった今実質的に唯一の)広告系出版社が主催する「宣伝会議賞」は、自分が広告に関われる貴重な機会になっています。

宣伝会議賞
 これは、プロ・アマ問わず誰でも参加できる、コピーやCM企画の公募広告賞です。実は何年か前から応募してたりします。いつも一次選考で敗退してますけどw 「中の人」をやっている友人から今年の案内をもらって見ていたら、久しぶりに応募してみたくなりました。

 さて、この賞には今年から「中高生部門」というのも開設されたそうです。これ、面白そうですよね。よくわからない作文や標語の募集は学校にたくさんくるけど、実在する企業や商品に関わる作品を創るほうが、ずっとワクワクするんじゃないかな、と思います。さっそく来週生徒たちに紹介してみよう。ぼくなんかより、アタマが柔らかいので面白い企画を考えそうですよね。

 というか、本当なら授業の中で広告が扱えたら楽しいだろうなぁ、と昔から考えていました。チャンスは、その昔存在した「選択授業」でしたね。「選択国語(表現)」なんて授業が担当できたら、きっと生徒たちとコピーやCM企画を考えて、応募してただろうなぁ。

 「選択授業」のない今でも、例えば「総合的な学習の時間」に、広告というフォーマットを取り込むことはできるんじゃないかな、と妄想しています。だって、例えば30秒のテレビCMをつくるために、対象企業を調べ、商品の購買層の生活を調査し、その商品が存在する空間を想像し、手に取りたくなる言葉を編み、それが効果的に伝わる映像と音楽を選び、編集して1つの映像作品にする、って十分「総合的な学習」ですよね。教科横断的だし、知的探求も、表現力も求められる。今だったら、タブレット1つで全部出来ちゃいますね。

 ああ、そういうのいつかやってみたいなぁ。

 英語の授業でだって、広告はとてもおもしろい素材です。英検なんかでも「チラシを読む」みたいなリーディング問題がありますし、表現という意味で考えても、広告って読み手の存在が前提になるから、よくわからないスピーチとかShow & Tellなんかより、目的を持った言葉選びが求められ、学習も深まるんじゃないかな、と思うんです。ちなみに『エイゴラボ』でも、そういうライティング問題入れてますよ。

 人を振り向かせたり、人に考えさせたり、人の心を動かしたりするために、ことばをあれこれ考えるのは、楽しい作業です。久しぶりに、そんな知的な楽しみにふける秋の夜長もいいかなぁ、と考えています。