落語家トレーニングで「読む」から「話す」へ

 1年生の教科書は、友人Aと友人Bを引き合わせて、お互いを紹介する会話文です。ここって、3人めが登場するからペアでやるのも難しいし、1人でやるのはもっと難しいし、いつも悩みます。

 でも、Aくんの方を向いて「Aくん、こちらがBくんだよ」みたいに手で指しながら話すことができたら、「読んでる」というより「話してる」って感じが実感できる場面でもあるので、ぜひそういう感覚を味あわせたい。

 そこで、まずは1人で顔の向きを変えながら話す練習。

 これは、実際に落語家さんがおこなっているトレーニングらしいのですが、鉛筆を両手に持って、机の両サイドあたりに立てるように持ち、それぞれをHiroくんとSeemaさんに見立てます。その状況で、どちらかの鉛筆のほうに首をちょっとかしげて、語りかけるわけです。これは長野県のK先生が、その昔公開授業で披露してくださっていて、以来1年生でいつも取り入れています。

 落語家さんって、ちょっとした首の動きだけで、まるで2人の人が話しているように感じさせちゃうワザがありますが、実はその基本はとってもシンプルですね。でも慣れないとなかなか自然にはできません。でも、これができるようになるために、と何度も何度も教科書の文を音読してくれるので、そんな仕掛けとしても効果的です。

 そのあとは、小さなカードに名前と関係と出身地と好きなものが書いてあるメモを配布して、ペアや3人組で練習。ペアの場合は、「隣の人」と「自分の筆箱」を紹介する、という力技。配られたメモは筆箱くんのプリフィールということにします。

 この場合は、片方は架空の与えられた情報で、もう片方は隣の人のリアル情報になるため、少し自分で考えながら話す必要が生まれますが、すべてリアルでやる前のパタプラみたいなものとして、一段階入れてみました。

 ちなみにこの前段階では、4人組になって両サイドの人を、その人が持っているメモの通りに紹介する、という練習もやりました。この場合は両方とも架空の情報なので、完全にパタプラですね。ちなみに対角にいる人は一回休憩です。)

 最終的には、リアルな友人をリアルな友人に紹介する、という自由度の高いタスクに移行するのですが、中1の場合は、このくらい丁寧に(そしてその流れの中で何度も同じような英文を)練習する仕掛けがあったほうがいいかなと思います。

 いずれにしても、顔の向きを考えながら、誰に語るのかを考える練習です。「読む」から「話す」になるためには、まずはこの「聞き手」の存在が一番大きいでしょうから、自然にその人のほうを向けるような動きが身についてくれてるといいなぁ、と思います。