中学校学習指導要領案(外国語)に対するパブリック・コメントを提出しました

 〆切ギリギリになってしまいましたが、2月14日に公示された中学校学習指導要領案について、3件のパブリック・コメントを提出しました。今日3月15日が〆切です。何時まで受付けてくれるかわかりませんが、まだ間に合うようでしたら、これからでもみなさんの思うところをお送りいただいた方がいいかと思います。詳細はこちらです。

 以下に、送った3件のコメントをご紹介しておきます。普通の公立中学校教員の「思うところ」なので、たいした内容ではありませんが、ご笑覧いただければと思います。

中学校外国語科について、特に「目標」についてのコメントです。

改定のポイントとして挙げられているように、「何ができるようになるか」を明確化したことについては、一定の評価ができると思います。外国語科の目標においてもそれを意識したことが感じられます。

しかし、「はっきり話されれば」「簡単な語句や文で書かれた短い文章」といった条件が具体的でないため、到達段階がイメージできません。「WPM何語くらい」「Flesch Kincaid Grade Leveldでこれくらいの語彙」といった具体的なレベルを文部科学省が明確に示すべきだと思います。学習指導要領本文の中に入れるのは馴染まない、ということであれば、「解説」で構いませんので、文部科学省が責任を持って提示してください。具体的な英文の例などを示してもよいと思います。

その意味では、英語科の学習指導要領はにCan-Doリスト的なものを含めるべきだと思います。現場の教員がCan-Doを作っている現状は完全にあべこべです。そして、その目標を達成するための手段を考えるのが英語科教員の仕事ですので、「授業は英語で行うことを基本とする」といった「手段」に、学習指導要領が踏み込むべきではないと思います。

中学校外国語科について、特に「音読」についてのコメントです。

中学校現場での指導において、教科書の本文を正しく、適切に音読できるようにすることは、大きな目標の1つになっています。授業の中での活動としても多くの時間が割かれている現状があると思います。

音読という活動自体はコミュニケーションとは言えないでしょうから、それが「目標」になることは馴染まないのだと思いますが、せめて「言語活動に関する事項」の中では、例として触れておくことが自然かと思います。これだけ授業の中で扱われている活動が、学習指導要領の中でまったく触れられていないことに違和感を感じます。

関連して、文字と音の指導についても、もう少し丁寧な記述を求めます。音声について、「現代の標準的な発音」「基本的なイントネーション」とだけ書いていますが、特にどの子音を定着させることを目標にするか、どういったリンキングは中学生のうちに練習させておきたいか、といった点について、日本全国の英語教師の間で共通認識がありません。そのことが、教室における音声指導を躊躇させている原因になっていると思います。

「話すこと」に関しては適切さばかりが求められ、正確さが軽視される風潮を感じます。初学者に全てを求める必要はないかと思いますが、授業でただやみくもに話させるのではなく、中学校時代に確実に身につけさせたい項目を意識して指導していくべきだと思います。

そのためにも、文部科学省に音声指導に関してより具体的な指導項目や目標を提示していただきたいです。そして、その目標を達成するための手段を考えるのが英語科教員の仕事ですので、「授業は英語で行うことを基本とする」といった「手段」に、学習指導要領が踏み込むべきではないと思います。

中学校外国語科について、特に「書くこと」についてのコメントです。

目標には「関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて正確に書くことができる」とありますが、学習指導要領案を読んでも、ここで求められている「正確さ」のレベルがわかりません。三単現のsが抜けていたら不正確なのでしょうか。つづりが間違っていたら不正確なのでしょうか。おそらく「書くこと」における正確さについて、そこまで細かいことを求めてはいないと思いますが、反対に関連する単語がでたらめな語順で並んでいても意味が通じそうなら、それでよしとするのでしょうか。

文部科学省では、中学生段階で求められる「正確さ」の基準を示していただきたいです。これは「話すこと」の目標についても同じことがいえますが、例えば「だれが」「する(です)」「だれ・なに」「どこ」「いつ」といった、どの英文にも共通する基本的な語順を定着させることがまず第一だと思います。

「内容」の「知識及び技能」には、中学校で扱うべき文法項目が羅列されていますが、どの文法も並列に扱うのではなく、コミュニケーションに役立つ文法や、どの文法事項にも共通する基本的な英語の仕組みこそ、指導していくべきだと思います。文部科学省には、書くことについてより具体的な「目標」を示していただきたいです。

そして、その目標を達成するための手段を考えるのが英語科教員の仕事ですので、「授業は英語で行うことを基本とする」といった「手段」に、学習指導要領が踏み込むべきではないと思います。