CanDoリストよりも「英文法としての習熟度リスト」を!

 昨日は久しぶりに、都内にお勉強に行ってきました。発表者の中に遠方にいる畏友2人が含まれていたので、関東で彼らに会える貴重な機会と思い、普段あまり行かないセミナーに思い切って参加してきましたが、一日中英語教育を考えることができる贅沢な時間でした。

 発表は「話すこと」に関するものが多かったように思います。「即興性」を意識したディスカッションやそれに向けての疑似会話トレーニングなどです。最終的に即興でやり取りできるようにするために、少しずつ負荷をかけていくタスクの並びもよく考えられていて、とても勉強になりました。

 さて、そんな中、私が考えたのは、即興的なやり取りの中で話されている生徒の英語が、タスクや授業を通してどのように質的に向上していくのかを、教師はどう看取っていくのだろう、ということです。

 昨日の発表では、発話数などを数値化して生徒の頑張りが可視化できるようにすごく工夫がされていました。また、生徒の発話を引き出すための表現(ex. I agree with you because....)を使わせる仕組みもとても工夫されています。でも、昨日このタスクをやったときの自分の発話より、今日の発話のほうが質的に向上していた、というフィードバックは受け取りづらいのが現状です。becauseが使えたことよりも、becauseの後ろに出てきた英語の質を高めるのが、本来の目的なはずです。そこをどう看取るか、ということです。

 これは昨年タスク本を読んでいたときも上山さんのスピーキング本を読んでいたときも考えてたことでした。

 タスク本↓

タスク・ベースの英語指導―TBLTの理解と実践

タスク・ベースの英語指導―TBLTの理解と実践

 

 上山スピーキング本↓

はじめてでもすぐ実践できる!  中学・高校 英語スピーキング指導

はじめてでもすぐ実践できる! 中学・高校 英語スピーキング指導

 

  「即興」「話すこと」というキーワードを語ると、「正確さにこだわらなくていい」と言われがちですが、それもどうかと思います。そもそも「通じるために最低限必要な正確性」は当然無視できないはずです。そして、スピーキングの際だけは中1でも高3でもサバイバルな英語でよい、とも言えないはずです。中1なら中1なりの、高3なら高3なりの「よりまし」な次の到達点があるのではないかと思います。(もしそれが存在しないのなら、今の評価の観点で言えば、授業中のスピーキング活動は「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」しか測れないことになってしまうと思うのです。)

 だからスキル的なCanDoリストよりも、コミュニケーションのための英文法としてこの時期には段階的にこれが身についていてほしいという「英文法としての習熟度リスト」みたいなものの方が切実に欲しいです。私はPedagogical Grammarに明るくないので、アカデミックな世界ではすでにそういうものがあるのかも知れないのですが、英語教師のあいだでそういったものがシェアされてないのが現状です。

 私は「意味順」がその軸になれると思っているので、「意味順」をベースにした評価基準みたいなものが作れたらいいなぁと漠然と考えています。そう、だから「意味順」ってTBLTと相性がいいんじゃないかとこっそり思っているんです。そっちの世界の人たちからもお知恵を拝借して、そういうのを作り上げてみたいなぁ。(誰が一緒にやりませんか?)

 まぁ、これは「書く」についても同じなんですけど、(良いことなのか悪いことなのかわかりませんが)せっかく「四技能!」とプロダクティブな活動に注目が集まる時期なんですから、こういう部分についてももっと話し合えるような機会があるといいと思いました。

 というか、学習指導要領って、本来そういうことが書いてあるべきなんじゃないの?そこに到達するための手段(「英語の授業は英語で」など)は教師に委ねて。