大学入試改革は「まだ引き返せる」

 東大に行ってきました。初めての赤門。

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 こちらのシンポジウムに参加しました。大学入試を巡って紛糾する英語試験にまつわる東大シンポジウム第2弾。申し込み開始からあっという間に満席になっちゃったのですが、奇跡的に本会場の席が取れました。

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 私は中学校教師ですから、日頃大学入試に関わる指導をしているわけでもありませんし、高校の指導の実態を把握しているわけでもありませんが、昨年担任した生徒たちが新入試一期生になるのでこの問題に対してそれなりに関心があります。

 シンポジウムの中身については、いろいろな人がつぶやいてますし、充実した「まとめ」なんかもありますので、そちらをご覧になっていただければと思います。

togetter.com

 文科省の方やG◯ECの中の人を呼んだりしてた前回とは違って、今回は全体的に「慎重派」「反対派」の方がキャスティングされていた会だったかと思います。会場に来ていたのはやはり「慎重派」「反対派」の方々が多かったのだと思います。

 日頃お世話になっているあの方やあの方も登壇されていたので、私は個人的に楽しくお話を伺わせていただきましたが、組織として意思決定する人々、そして現場で生徒と向き合って指導する人々それぞれの決意というか、強い思いを感じることができました。特に石井副学長の「まだ引き返せると思っています」はとても心強いお言葉です。

 私自身は「慎重派」です。高校でも4技能を扱うべきですし、そういう授業が多くなればいいなと思っていますが、そのために入試に外部試験を利用する、というのは筋違いだと思っています。

 入試に関して言えば、一律に外部試験を使うのではなく、必要な大学・学部・学科が二次試験として英語面接を実施すればよいと思います。外部試験のスコアを求めたい学科は求めてもいいと思います。全員に求める必要はないでしょう。そもそも50万人が公平に試験を受けられる環境がまだ整っていないですから。

 入試が変われば授業が変わる、という言説にも懐疑的です。大学入試にリスニングが入ったときに高校の授業は音声重視になったのでしょうか? TOEIC対策が増えて大学の授業はコミュニカティブになったのでしょうか? 現在のGTECのスピーキング問題なんかをみると、ああいう形式の問題に対してパターンを教え込んで「対策」をするだけでそれなりに効果が出るでしょうから、入試対策だけをやってきたような先生が授業スタイルを変える理由にはならないと思います。

 実際、入試制度が変わって授業スタイルが変化したという事例データは、ないと思います。先日もfacebookで推進派の先生にそのへんをご質問させていただきましたが、ご返答いただけませんでした。そうなるんじゃないか、という思い込み(期待)だけで推進してしまうと大変危険だと思います。

 そして「推進派」の方々は、「慎重派」や「反対派」の人たちを「既得権益にしがみつく抵抗勢力」と分断します。その論法が何より残念に思います。「慎重派」の先生方の中には授業でどの技能も大切に指導されていて、いわゆる推進派という方々よりもさらに素晴らしい実践をされている方もいらっしゃるのに。

 「推進派」がまず手を組むべきは、外部試験業者ではなく、そういう授業をしている「慎重派」の先生方だと思います。一番の問題は、推進派と慎重派の先生方がじっくり話し合いをしてこなかったところにあります。現実的に各高校で外部試験に対する対応や授業のやり方について決めなければならなくなって、それぞれの高校の英語科部会でもしかしたら衝突が起こっているのかも知れませんが、「もう決まったのだから」とか「文科省が言ってるんだから」といった言葉で議論を遮るようなことがないことを祈ります。

 私は最近「推進派」の意見を生で聞いてみたい、私の意見に対するコメントを聞いてみたい、と空気を読まずに(大変ご迷惑をおかけしております)推進派の方々に近づいてはお話させていたくようにしています。だから昨日のシンポジウムについても、「推進派」の先生方のご意見をぜひ伺いたいです。

 今からでも遅すぎることはないと思います。それぞれの立場の方の考えを冷静にぶつけ合う場があればと思っています。この記事のコメント欄をそのような場として使っていただいても構いませんので、よかったらみなさまのご意見もお寄せいただければと思います。