ぼくはそういう基本的なことを、一体どこでどうやって学んだんだろう?

 後期のこの時期は2年生も、3年生も模擬授業に取り組んでいます。特に2年生は、実質的に初めての模擬授業になる学生も多く、かなり緊張しているようですけど、連日模擬授業練習室という設備を活用して、自分たちで何度も練習しているようです。履修者も多く授業中がじっくりコメントできないし、他の方にも参考になるかも知れない内容なので、授業を見ながら感じたことを、ここにも書いておきます。

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模擬授業室で模擬授業に取り組む学生たち

 先週の授業後に話題になったことは声の大きさ。どのくらいの声で話せば、教室の後ろの席まで聞こえるか、実際にやってみないとわからないですよね。さらに言えば、どのくらいの声で話せば後ろの席の人に強く印象に残るか、まで考えると、もっともっと張って声を出さないといけないわけです。コロナ禍に、教員の声出しがセーブされる事情はありますし、マイクなどの機器を使う場も考えられるんですけど、いずれにしてもただふつうに話している感じでは、伝わりません。「まずは声の大きさが8割だ」みたいな雑なコメントをしちゃいましたけど、最初はまずそこからだと思うんです。

 今日の模擬授業では、机間支援の話題になりました。ペアでの活動を指示して生徒が活動を始めたら、教室内を巡回して生徒の活動をモニタリングしましょう、というアドバイスをしましたが、冷静に考えたら当たり前過ぎて今まで改って話をしたことがなかったな、と気づきました。授業をしている私の姿から学び取ってもらえれば言うことはないのですが、ある程度は「今の私が自然にやっていること」をきちんと言語化して伝えていかないといけないのかも知れません。

 でもまぁ、大教室で講義をしている中で話しても、本に書いてあっても、実際にやってみないと見えないものがたくさんありますね、その意味では、もっと早い段階で模擬授業に取り組めるといいのかな、とも思います。(今年の前期授業では目標設定とテスト作りに力を入れて「実演」ならぬ「実作」に取り組んでもらっていました。)

 もともと2年生前期に行う一番最初の教科教育法の授業内でも「模擬授業的なもの」はやりたいと思っていて、できれば「既成の指導案通りに指示を出す練習」をやりたいと考えていました。まずは形を覚えるという意味で、台本通りに動く(指示する)練習をやって、その段階で「声の大きさ」とか「立ち位置」とか「板書」とか「指名の仕方」みたいな基本的なスキルを指導できるといいですよね。そんな感じにシラバスを微修正していきたいなと改めて感じました。

 カリキュラムの中で英語そのものの授業も少ないので、英語の力をつけてあげたいと思うとやりたいことが多すぎてなかなか悩ましいのですが、うまく組み合わせながら(「英語での指示出し」というタスクなら、英語そのものの指導もできますもんね)、両立させていきたいです。

 そういえば、このたび著者御一同さまより以下の書籍をご恵投いただきました。この著者の方々ならそういった「基礎基本」となる「型」も学べる書籍なのではないかと思うので、私も読ませていただいて勉強したいと思います。

 そして、現場での学びのほうに目を向けると、そういう超基本的なスキルを学生時代にじっくり訓練しないまま教壇に立っている若い先生方も多いのではないかと思います。私自身も教育学部の出身なわけででもなく、あまりそういう実技を学ぶ機会はないまま当時現場に放り出された感があります。

 「研修」というと、新しい指導法みたいなものを模索させるようなものも多いですが、どの教科、どの年代の人にも大切なスキルがある思うので、ある程度体系的に学べる(鍛えられる)研修制度があればいいですよね。「教員免許更新制」は廃止されるそうですが、代替案として「どんな学びの場」が教師に提供されるのかは気がかりです。(そして、この春に「期限切れ」というケチのついてしまった私の教員免許はこのあとどうやってその名誉を回復してもらえるのかも気になるところです)