神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない (中公文庫)

神はサイコロを振らない (中公文庫)

 ドラマ、見てなかったのですが気になってました。本を読み終えて、「見ておけばよかったなぁ」と少し後悔。面白かったです。

 10年前に行方不明になった飛行機が突然戻ってきた。しかも乗客乗員は10年前のまま。この事態を予測していた大学教授によると、3日後また消えてしまうらしい。10年会えなかった人たちと3日だけ会えるとしたら、何をするだろうか?

 この「時間の重み」ってやつに弱いんです、私。10年の間に家族はそれぞれの時間を進めている。もちろん進められずに苦しんでいる人もいる。そういう「想い」の交錯やすれ違いがどうも切ない。屈折した代議士の息子や天才テニスプレーヤー、駆け落ちのカップルから殺人事件の犯人まで。それぞれ「どうしてもやらなければならないこと」を抱えながらそれぞれの3日間を過ごす姿を、上手に描いています。そういうものを持っている人は幸せだ、と思いました。

 道徳の教材で、淡谷のり子が「あなたは歌と一緒に死んでいくのね」と師匠に言われた、という話を思い出す。私は「何と」一緒に死んでいくんだろう。