道徳「ハゲワシと少女」

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 県立高校前期募集の発表を翌日に控え、どこか落ち着きがない子どもたち。気晴らしにレクでもやろうかと思ったけど、あえて気合いを入れて道徳の授業をやってみました。内容は3年生のクラスではいつもやっている「ハゲワシと少女」の写真を巡るお話。

 内戦が続くスーダン。死体しか食べないハゲワシが、目の前で飢えに苦しむ少女を狙ってます。少女が死ぬのを今か今かと待っている。そんな悲惨な瞬間をカメラにおさめた報道写真家ケビン・カーター。NYタイムスに掲載され、ピューリッツァー賞を受賞するや、「世界を動かす1枚だ」「写真を撮るより先に何故助けないのか」と世論を二分しました。

 この写真は三省堂の英語教科書「NEW CROWN」にも掲載されているので、場合によっては英語のディスカッションやディベートに活用してもいいでしょう。今回は「国際理解的な側面」と、小グループでの議論を通して知る「意見の多様さ」を感じてもらえればと思い、発問をしてみました。簡単な流れは以下の通り。

 1.絵を提示
  (1)ハゲワシを隠した状態で見せる
   Q「黒いのは何?」
   Q「隠れてるところには何があるだろうか?」
  (2)ハゲワシを見せる
   「今どんな状況?」
   ・ハゲワシについての説明
 2.感想記入…①
 3.情報提供
   ・撮った人ケビン・カーターについて
   ・スーダンについて
   ・ピューリッツア賞について
 4.意見記入…②
   Q「写真を撮るべき?先に助けるべき?」
 5.班でシェアリング
 6.全体でシェアリング
   ・班長がレポート
 7.感想記入…③
 8.教師の話

 生徒は予想以上に真剣に考えてくれました。

 ○「撮るべき派」の意見
  ・「百聞は一見に如かず」だ。
  ・写真のおかげで、世界を動かすことができた。
  (何万人も救えるかも知れない)

 ●「先に助けるべき派」の意見
  ・人の命は数じゃない
  ・写真は撮れた方がいいけど、誰かを犠牲にする必要はない
  (あなたがその犠牲者になりたいですか?)

 意見交換の後、感想を書くときの顔は結構真剣でした。特にケビン・カーターが後に自殺してしまったことを伝えると、みなショックを受けていました。中には「動物が人間を食べるなんて酷い、と考えることは人類の傲慢だ。1万年前ならそんなことだってあっただろ」なんて鋭い意見も飛び出し、「ああ、たまにはこういう授業もちゃんとやらなきゃなぁ」と改めて思いました。