すみません、ありがとうございます、ごちそうさま

 偉そうな「お客様」が嫌いです。

 前にも同じようなこと書いたような気もするけど、また書きたくなったので。いや、別にそんなことを想起させるような具体的な事例があったわけでもないんだけど。

 いつから消費者がこんなに偉くなってしまったのだろう。「患者様」なんて呼び名が出てきた頃からかなぁ。いや、古くは「お客様は神様です」なんて言葉もあったから、あれを拡大解釈し始めた頃から踏み外してきたのかも、日本社会は。少なくともぼくが小さい頃は、お金を払って買い物をするぼくらの方が、「すみませーん」といって駄菓子屋の暖簾をくぐったものだから、ここ20〜30年くらいの変化なのかな。

 「おしごと」してる人はみんな「えらいひと」だって、キャリア教育以前に小さい頃に学んでいると思うんだよね。親から(例えば絵本見たりしながら)いろんな「おしごと」の存在を教えられたときに。そして子どもたちは買い物をしたときに、商品を受け取りながら「ありがとう!」って言ってたり(言わせたり)してると思うんだよね。それなのに大人になると、「してもらう」のが当たり前になってしまう。

 店舗で聞こえてくる「声」は店員のものばかり。「いらっしゃいませ」「いかがですか?」「あたためますか?」「○○円になります」「ありがとうございます」 客は一切しゃべらなくても買い物はできるし(「あたためますか?」には頷けばOK)、たまに客から言葉が出るとしたらクレームばかり。うーん。結局、同じ人間たちで「サーバー」と「レシーバー」を交代しながら生活を送ってるのになぁ。

 結局は自分たちの利益のために「お客様至上主義」に走ってしまった企業が悪い。そしてそれに甘えて堕落していった我々も悪い。とはいえ嘆いたところで急に世の中の仕組みなんて変わらないだろうから、世の中の「いいな」と思うところに目を向けてみる。

 それは、客のことば。

 ラーメン屋とか定食屋さんなんかでは、食べ終わって出て行く人が「ごちそうさま」と言い残していく文化がかろうじて残っています。バスを降りるときに運転手さんに「ありがとうございます」とさりげなく言える人は素敵だなぁ、と思います。(ぼくも言うようにしています) おばあちゃんがやっている町のクリーニング屋さんの店先で「すみませーん」と言って、出てくるまでの間、笑顔でずっと待てる人がいます。

 うん、そういうのはいいなぁ。

 ということで、提案です。(お金を払ってはいるけど)商品やサービスを受けとる側もさ、ちゃんと口に出して言ってみませんか?

 「すみません」
 「ありがとうございます」
 「ごちそうさま」

 世界は急には変わらなくても、ぼくらのために「おしごと」をしてくれている「えらいひと」たちの心を、少しでも軽くしてあげたいなぁ。