ゲド戦記

 久しぶりに都内まで出かけたので、なんとなく映画でも観て帰ろうかな、と思った。きままにぶらりと寄ってみたら、そうか「ゲド戦記」が封切られたばっかりだったね。しかもあと10分で本日の最終回がスタート。え、残席あり? ラッキー。(ただし前の方で首がいたくなった…)

 他のジブリ作品と同じように、ところどころ難解(不可解?)ながらも、メッセージは他の作品より明確。光と闇。生と死。人間と竜。そして親と子。対になる2つは時に立場を入れ替えながら、文字通り主人公アレンの周りを取り巻いている。大切なのは両者が「ともにあること」なんだ。そのバランスが大切なんだ。映画のメッセージとしてはやや地味かもしれないけど、ぼくも日頃感じているところだったから、妙にしっくりきた。

 そんな「対比」や「共存」を映画そのものの作りの中にもにじませている。「カリオストロ」やら「千と千尋」やら、父親の作品を想起させるシーンはたくさんあるけど、どれも立場が「本家」とは何かが違っている。例えば男女の立場が逆転している。まぁ、どっちでもいいんだろうけどね、本質的には。

 また「親と子」ということであれば、当然制作者の親子の顔が浮かぶ。ストーリーの中で描かれる「親子」関係を見ていると、そのコンプレックス(英語的な意味でそのまま「複雑」と訳した方がすっきりするかも)はなんとなく意味深。主人公アレンのしてしまったことなんて、息子の宮崎吾郎氏の心情を重ねるとなんかすごい。(観れば分かります)

 映画館を出ると外は涼しい風が吹いていた。入る前の自分と何か変わったかな? 地下鉄の中でも鞄の中の読みかけの本を開く気はしない。頭の中が映画でいっぱいになる。そういうのって結構いい気分。今日は映画を見たなぁといううれしい気分を噛み締めて帰路につく。