意味から形式を考える音読練習

 大学院から戻って以来、私なりに音読に力を入れた授業をしているつもりですが、以前よりはずっと「正しい発音」とか「英語のリズムで」といった形式面にこだわって練習をしています。

 個別の音に関しては、中学校3年間のうちにr, l, v, f, th の5つの音がしっかりと出せるようになれば概ねOKかな、と思っています。なので、そこをしつこくこだわって指導しています。この5つの音に関しては、靜先生の「Englishあいうえお」がすごく役立ちます。日本語の音との対比は、中学生の発達段階にぴったりで、みんな喜んで練習しています。

ENGLISHあいうえお―これができれば英語は通じる

ENGLISHあいうえお―これができれば英語は通じる

 リズム指導に関しても靜流です。「ポンポンメソッド」を軸に手拍子したり、足踏みしたりして、強弱を体感しながら読むようにしています。

 ポンポンの表示はこれまで大小の●を英文の上に打っていましたが、これだと特に大ポンを読む際に、過度に大きな声を出そうとしてしまって、ピッチがあまり上がらない生徒が多いように感じていました。そこで、「音が高くなる」ということをより伝えるために、縦棒の長さを調節してステレオのグラフィック・イコライザ風にすることで、強弱(というか高低)を伝えてみました。

 ただ、これだと「長さ」という要素は伝わらないので、かえってミスリーディングになってしまわないか不安もあります。それでも、この表示はできるだけ生徒の直感的に伝わって、何よりそれで生徒の音読に変化があればいいなぁと思うので、とりあえず試してみながら、さらなる改良を目指そうと思っています。(究極は楽譜みたいになるのかも知れないけど、それだと情報が多すぎる気もします)

 リズム音読の意外な敵は「眠気」です。

 お経のように淡々と一定のリズムで練習していると、結構眠くなります。昔、ハードロックのライブで立ったまま眠ってしまったことがありますが、ずっと調子が変わらない、というのは音が大きかろうが眠くなるものです。なので、練習の途中に立ち上がって足踏み音読をさせたり、ペアでの「対面リピート」のように認知負荷がかかる練習をさせたり工夫しているつもりです。

 それでも、私の授業を観た人の多くは、「発音の指導ばかり」「状況や気持ちを考えた音読はしないのか?」と言った感想を持たれるようです。この質問がいつもぼくを悩ませます。

 そもそも、ストレスが置かれる場所には一定の法則があり、英文を読みながらその語の持つ意味や役割が分かっていなければ、そこにポンを置いて読むことはできません。もちろん、慣れてくれば内容語と機能語を感覚的に見分けることができるようになって、意味を考えなくても読めるようになるかも知れません。でも、中学生レベルで英文を見た瞬間にそんなことができるようになっているなら、それでもう御の字じゃないか、とも思うのです。

 また、ポンが置かれる位置はある程度機械的であったとしても、その中の大ポン(ピッチが上がる場所)は、文脈から一番伝えたい語になるわけだから、自然と「話者の気持ちを考えた音読」になるはずです。

 だから、「形式だけにフォーカスした音読」とか「内容を考えた音読」というものが存在するのか、疑問に思うのです。私の授業を見て「形式だけ」と思う方々の授業は、カウンターパートとしての「内容だけ」の音読をやっているのでしょうか、と邪推してしまいます。形式からだって意味を考えられるし、意味を考えるからこそ形式にだってこだわるはずです。そんな提案ができればと思って、そういう授業を公開しているつもりです。

 もっとも、一番は大切なことは、学習している生徒たちが「発音ばかりやってる」とか「もっと発音も教わりたい」なんていう感想を持たないように、バランスよく指導してあげることかな、と思います。今やっていることが、習得の役に立っているという実感を持たせてあげたいです。