合唱曲「春に」

 最近の卒業式ではいろんな合唱曲が歌われることが多いです。証書授与と並んで、卒業生の見せ場になりつつあります。今回はそんな合唱曲の中で、私の好きな曲をご紹介。

 現任校でも「門出の言葉(呼びかけ形式のいわゆる答辞)」の中で、ぼくの好きな「春に」が歌われました。ここでまず涙です。卒業生の必死な声も、叫びもかっこいいんだけど、この歌は強いです。決して派手じゃなくてむしろ優しい曲なんだけど、何故かぼくらの心を強く動かすから不思議です。確かNHKの合唱コンクール(高校の部)の課題曲だったと思うんだけど、中学生が歌っても十分素敵な曲です。

 谷川俊太郎さんの詩がまず素敵です。「春」の持つ「はじまりの予感」や「やるせない不安」をそんな言葉を一切使わずに表現してるのがすごいです。曲もそんな詩の世界をすごく上手に表現していますね。あー、この曲がいちばん好きかも。

「春に」(組曲「地平線のかなたへ」から)

      谷川俊太郎 作詞
      木下牧子 作曲 

  出典:教育芸術社 
  混声合唱曲集クラス用ニューコーラスフレンズ

 この気持ちはなんだろう
 目に見えないエネルギーの流れが
 大地からあしのうらを伝わって
 僕の腹へ胸へそうしてのどへ
 声にならいさけびとなってこみあげる
 この気持ちはなんだろう

 枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく
 よろこびだ しかしかなしみでもある
 いらだちだ しかもやすらぎがある
 あこがれだ そしていかりがかくれている

 心のダムにせきとめられ
 よどみ渦まきせめぎあい
 今あふれようとする

 この気持ちはなんだろう
 あの空のあの青に手をひたしたい
 まだ会ったことのないすべての人と
 会ってみたい話をしてみたい
 明日とあさってが一度にくるといい
 僕はもどかしい
 地平線のかなたへと歩きつづけたい
 そのくせこの草の上でじっとしていたい
 (大声で誰かをよびたい)
 そのくせひとりでだまっていたい
 この気持ちはなんだろう

 あ、でも花粉症の人にとって「春」は、

 このくしゃみはなんだろう
 目に見えない花粉の流れが
 大気からあしのうらを伝わって
 僕の鼻へ目へそうしてのどへ
 声にならいさけびとなってこみあげる
 この気持ちはなんだろう

って感じなんでしょうね。(谷川さんごめんなさい(><))