始発に乗って東京駅へ。そこから新幹線、東海道線を乗り継いで、静岡県島田市へ。
国立大付属中もいろいろ巡りましたが、今回は静岡大学附属島田中の研究発表会に行ってきました。「稲岡章代先生のワークショップがある」との情報を聞いて学校のサイトを見ると、1年生の授業で"imaginary"な友達を英語で紹介する、というタスクが設定されているではないですか! 今、大学院でTopic Effectについての研究をしようといろいろ読み始めている自分にとってはぜひとも見てみたい授業だったのです。
さて、その授業はというと、これまで少しずつ作ってきた(練習してきた)空想上の友達についてのPicture Bookを見せながら友達に英語で説明し、それについての質問を受け、適切に応える、という流れ。そもそも空想上の友達なので、中身についてはその場で思いつきで応えられる、というのがこのトピックのポイントですね。さらにそれを聞いたペアが、別の人にその「空想上の友人」を紹介するっていうタスクもやってました。こちらはいささか難しかった(&時間が足りなかった)ようですが、日頃から「聞いたことを別の人に伝える」という活動には慣らされているようで、難しくてもあきらめずにがんばって話そうとしている姿が立派でした。
基本的にスピーキングの活動なので、Picture Bookには絵や写真とキーワードだけが書いてあります。ここまでの過程で、一度も英文を書いてはいないようです。「読む」ではなく「話す」活動にこだわって取り組んでいるのが伺えます。
さて、基本的にこの手の活動が大好きな私ですし、まして今回はimaginaryなトピックを使ってるわけで、参観している私のテンションも上がりがちなのですが、さすがにこの半年間大学院でお勉強させていただいているので、これまでとは違った冷静な視点も生まれつつあります。当然教師と生徒の発音も気になるようになっていて、(自分ができないのは棚に上げつつも)教師の発音や指示文の英語的なミスに心の中でダメ出しをしてる自分もいます。
そして、この活動をより実りのあるものにするために、もう一つどうしても気になるのが「正確さ」の保障についてです。
今回の授業のねらいそのものが「適切さ」に置かれているのですが、それにしても特に1年生ですから、口からなんとか絞り出してきた英語が残念ながら間違っている、ということは多々あります。実際、私が聞いていた範囲でも"He...good at...soccer."とか"She like...books."みたいな英文が結構ありました。でもグループ活動だから教師がいちいち修正できないのです。1年生のこの時期に、他者紹介をやる意義としては、(この段階で完全に定着しないにしても)三単現のsやbe動詞の使い方、もっといえばbe動詞と一般動詞の使い分けなんかを、意識させながら活動させたいところ。でもその辺への言及が教師からあまりなされていなかったので、ちょっと気になってました。
しかし、今回の授業では、そこをカバーする取り組みもされていたのです。それは、この間のブログでも取り上げた「ボイスレコーダー」の活用です。
前回の記事のあとも、「実際に活用している学校がありますよ」といった情報も寄せられてはいたのですが、まさかそんな個人的にタイムリーな取り組みに、ここで出会えるとは思ってなかったので、すっかり大興奮です。生徒は、グループでの自分の発表を録音していたようです。で、次回の授業で自分がしゃべった英語を(間違いも含めて)そのまま文字興しするようです。で、当然それを正しく直すwriting活動が設定されている。
この学校では1クラス分(40台くらい)学校備品で買ってあるようですけど、amazonで調べたら一番安いもので3,000円台からありますから、3年間効果的に活用できるなら、1人1台買わせちゃうって手もあるかも知れないですね。筑波大付属中の「カセットテープレコーダー」的な使い方もできるかも。
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午後におこなわれた研究協議では、この"imaginary"についてと「正確さ」について、厚かましくも質問しちゃいました。一番興味深かったのはこの"imaginary"なトピックをこの学校では「既習の語をより活用することができる」と位置づけていること。私としては、"imaginary" な方が、普段は使わない未習語や難しい語に触れる機会を作れるのでは、とそのことを「効果」として期待しているのですが、この学校では「難しい語、相手が知らないかも知れない語を、どう既習語で乗り切れるか」という力をつけるためにこのトピックを活用している、とのことです。うーん、なるほど。
いずれにしても、3年生の授業も含めてとっても気づきと学びのある研究協議でした。ああ、次回の文字興ししてる授業も見たかったなぁ。都合がつけば、来年も見に行ってみようかな。
最後におこなわれた稲岡先生のワークショップも面白かったです。初めてお話を伺いましたが、この方も「アイディア」の方なんだなぁ、と思いました。いろいろ試して、失敗して、今の実践を積み上げていらっしゃる。そして、生徒との関わりを通して全員を引き込んでいくタイプの方ですね。その辺は、田尻先生なんかもと通ずるものを感じます。一番興味深かったのが、あまり英語の学習に気持ちが向かない生徒との距離を縮める方法として、チャンツを活用していること。いや、もちろん授業の中でもやってるんですけど、そういう生徒と教室外で横に並んで歩きながら一緒にやるそうなんです。歩きながらやると、自然に足のステップとチャンツのリズムが合わさって、体で感覚を掴める。稲岡先生の狙いは別の所にあるようでしたが、なんだか面白かったです。
研究協議会では静岡大学の三浦先生ともお話させていただきました。「ヒューマンな英語授業がしたい!」とかをずっと読んできてましたので、ちょっとミーハーにうれしかったり。ワークショップでは一緒にペアワークまでやらせていただきました(笑)
ヒューマンな英語授業がしたい!―かかわる、つながるコミュニケーション活動をデザインする
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iPadで英文を打つのはそれほど大変ではない(日本語よりは変換がないからマシ)と書きましたが、Wordが動くわけではないので、Pagesだとスペル・文法チェックがないのがちょっと不便でしょうか(スペルチェックはあるんだけど、何故かちゃんと作動してない)。Pagesでスペル自動補正がかかるのもかなり面倒な感じ。また、当たり前だけどソフトウェアキーボードですから、タッチタイピングは無理です。すぐ上とはいえ、文字列とキーボードをちらちら見比べながら打つのは結構疲れる作業です。長文を打ったり、綺麗に書式を整形したりするのはパソコンのワープロソフトに任せて、iPadはあくまでメモ作りくらいの目的で使った方がよさそうです。
さて、作業が終わってメールで提出できたのは日付が変わる直前。せっかく島田市に宿泊してのんびりするつもりだったんですけど、結局ホテルでずっと缶詰でした。無線LANが使える部屋にしておいてよかった。