全英連神奈川大会

 いろいろ更新が溜まってるので、ひとつずつ。

 横浜、行ってきました。

 午前中は大津先生(慶応大学)の講演。先生のお話を伺うのは何度目かなんだけど、今回が一番普通に聞けました。いや、いい意味で。

 これまで「ことばへの気づき」を謳いながら、ご自身のご講演等では人を追い込むような表現や論理を乱暴に展開しているように見えて、(内容はともかく)話しぶりがあまり好みではなかったのですが、今回はいたって紳士的。最後の質疑応答では、一般的な意味でのことばの使い方についての質問に、

自分が置かれている状況を考慮するとどう言うのが最適解であるかを客観的に判断する力が言語力だ

と応えているのを聞いて、小学校英語反対の前線で戦うマイノリティーという立場では、どうしてもああいうゲリラ的な戦い方しかなかったんだろうなぁと納得。いや、むしろ効果を考えて「選択した」戦術だったのでしょう。

 先生は英語に限らず外国語を単なる「コミュニケーションのツール」よりも高次元な「言語を客体としてとらえるための存在」として位置づけたいようですが、いつも例に出して下さるのが日本語のものばかりなのが気になります。せっかく英語教師が集まる場でのお話だったので、外国語と比較した上で「気づき」を促すような活動例や指導例を示してくれれば、聴衆にもっと「気づき」を与えられたのではないかな、と思います。

 お昼は中華街へ。青椒牛肉絲ランチ美味しかったです。

 さて、午後は中高の授業実演。

 ステージに生徒を乗せて、カメラもマイクもある中での授業は相当異空間。授業者(と生徒のみなさん)は準備から当日のパフォーマンスまで、相当ご苦労されたことと思います。まぁ、どちらも生徒たちはのびのびやっていたように思いますけど。

 中学校の授業は既習のレッスンをピクチャーテリング風に英語で説明する活動。「教科書を何度も活用する」「読むのではなく話す機会を設定する」「個の発表機会を増やす」というのが、活動のメリットでしょうか。思い返せば、3年前の集中研修の研究授業でぼくも、似たような活動をやらせてましたね。(ただしあの時は学んでいる最中のレッスンを扱いました)

 ただ、生徒の口から出てくるのは発音や文法のでたらめな英語。ここが課題でしょう。

 うちの先生は某所でこの授業をかなり辛口に評価されてました。中学生レベルでは自由に話させるより、良質の英文を再生できるようにすることの方が大切だ、ということでしょう。ぼくも授業を参観しながらそういうところが気になるようになってきているので、そこについては完全に同意するところなんですけど、個人的にこの手の活動が好きだし、これまでもこういうのをやらせてきてたので、「フリー会話禁止」という立場は取らず、どういう改善が可能かを考えてみたいと思います。

 でたらめ英語を話した生徒が、自分の英語がでたらめであったことに気づいて、正しい英語にたどり着いて、直せればいいわけですよね?

 1グループに1台ICレコーダーを置いて、生徒の発表を録音してみてはどうでしょう。今回のケースで言えば、少人数指導の授業だったので、生徒も20人弱。しかも4人組でやるから、同時に発表するのは5人くらい。5台くらいだったら準備するのも不可能ではないと思います。で、あとで自分で自分の発表を文字興しする。自分が話した英語を視覚化させるわけです。で、それを正しい英語に直して提出する。スピーキングだけでなくライティングの練習にもなると思います。

 覚えた英文を適切に再生できるようにすることも大切ですが、個人的には(多少手間と時間はかかりますが)こういう両方向からのアプローチも大切なんじゃないかと思います。

 そのあとの高校の授業実演。とてもおもしろかったです。

 うちの先生が指導者だったので、実は夏休み前に同じクラスでの授業を参観させていただいていたので、今回はその時とも比較して、先生や生徒の様子を観察することができました。

 一番印象的だったのは、先生が頻繁に生徒の英語にダメ出しをしているにも関わらず、教室の空気が全然悪くならないこと。これは生徒のレベルの問題、とかではなく、やっぱり先生のお人柄というか、生徒との関わり方によるんだろうなぁ、と感じました。「できない」があるから、「できた」ときに嬉しいわけで、その対比が明確になることで、できたときの生徒の表情が、さらに明るくなるんだなぁと思いました。

 少し話が逸れるかも知れませんが、今回ステージでの授業があれだけ「楽しく」見えたのには、2つ計算外の要素もあったようにも思います。それは、カメラとマイクの存在。

 まるでテレビのクイズ番組のように、回答者の顔が並んで大写しになったら、そりゃあ生徒のやる気は俄然上がりますよね。緊張度も半端ないでしょうけど、クイズ形式の単語テストを純粋に楽しんでいるように見えました。そして回答しない生徒にも授業に参加する、そして回答の様子から学ぶ機会を創り出していたように思います。

 そして、さらに効果的だったのはマイク。マイクのおかげで教師も生徒の声をちゃんと拾うことができて、たぶん教室での授業より活動の目標に近づけたのではないでしょうか。カメラは無理にしても(過剰演出だし)、マイクは普段の授業でも取り入れられないものでしょうか。ワイヤレス2本あるだけで、ずいぶん変わってくるように思います。最新のICT活用云々の前に、英語の授業の本質的な部分をサポートするような技術をどう教室に持ち込むかを考えてみたいと思いました。

 初めての参加でしたが、充実した気づきと学びがありました。やっぱり教師がただ実践を語るより、生徒の様子が拝見できるこういう会は、それだけですごく価値がありますね。でもあれだけの規模となると準備も大変そう。運営のみなさま、本当にお疲れさまでした。