英作文のすすめ

 少し前にこのブログで「意味順ノート」をご紹介しました。
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 この考案者でもある京都大学の田地野先生が書いた新刊が出たので、さっそく読んでみました。まだ出たばっかりなので、レビュー一番乗りかな?

〈意味順〉英作文のすすめ (岩波ジュニア新書)

〈意味順〉英作文のすすめ (岩波ジュニア新書)

 「岩波ジュニア新書」の枠組みで出てますけど、若い世代だけでなく、最近になってあわてて英語を学び直す年代向けという感じもします。中学・高校まで文法事項を振り返りながら、全部「意味順」に当てはめて解説していきます。

 意味順ノートが出た時には、「これ面白いなぁ」と思いつつ、画期的というよりはニッチな商品だなぁと思って見ていたんですけど、この本を読んでみて、「意味順」が思ったよりよく練られているフレームなんだなぁと今さらながらに感心。「ただの5文型じゃん」とか「少し前に流行ったBig Fat Catとかと同じじゃね?」と思って読み始めたものの、なかなか深いです。

 面白いのは、いわゆる5文型を超えてSVAとかSVOAみたいなものも受け容れられるようになっていること。また、これまでbe動詞を=(イコール)と教えた私としては、「です」で教えることには抵抗があったんだけど、進行形や受動態の問題も含めて、すっきり説明しきっていること。そして、考えられる例外(仮主語itとかThere is/are構文とか)をちゃんと網羅して随時フォローしていること。最後の方は、関係代名詞や仮定法にまで触れていること、などなど。

 もちろん、いろいろ網羅したくなってしまったために、それなりの厚さになっちゃってますから、本当に英語が苦手な人が学び直すための教材としては、若干ハードルが高くなっちゃった気もします。文法用語はあまり使っていないものの、中学生にはこのままじゃちょっと難しい。高校の教室なんかに置いておいたら、これでスッキリして目覚める子はいるかも知れませんけど。

 そういう意味では、この意味順アプローチは仕組みを理解した教師の手によって指導されるべきかな、とも思います。だから、こういった学習者向けの本だけでなく、英語教師向けに意味順的指導法のメリットを説くような本が出てきてくれると、意味順ノートももっと活用されるんじゃないか、と思います。(いや、田地野先生の他の本を読んでないんで、既刊でしたらすみません)

 個人的にはすごく面白いなぁと思っているので、中学生が自力で英作文を書く際の拠り所のひとつとして、視覚的に提示しながら指導したいなと思っています。そのための「意味順ノート」という商品なんでしょうけど、教室内に掲示したり、ノートにちょっとした工夫をしたりすることで、どんなノートでも意味順を意識させられるように思います(まぁ、そんなこと言うと商品的には身も蓋もないんですけど) 例えば、ノートの真ん中のページの上に、こんなインデックスをつけておくのもひとつの手ですよね。

 もしくは「意味順下敷き」とかあったら欲しいかも。(田尻先生のヤツみたいなの)

 あとは、せっかくこの枠組みで学んでみようと思った人のために、「意味順ワーク」みたいな教材があったら面白いでしょうね。もう制作中かな? 正進社の語順ドリルみたいなのとコラボしたら面白いな。

 ひとつのルールですべてが説明できちゃう、ってうまい話はないと思うんだけど、こうやって誰かが苦労して整理してくれた枠組みは、指導にうまく活用していきたいものです。この間、Twitterで田地野先生の論文みたいなのも出回ってたので、ぼくもその背景的なものをもうちょっと読んでみようかなと思います。