初めての海外:ロンドン滞在記(1)

 実家の大掃除で発掘された1枚のトレーナー。

 くしゃくしゃでボロボロなんですけど、ぼくにとっては懐かしい記憶がよみがえる一枚。初めての海外でロンドンに行った時の、思い出の一品なんです。そんな昔話を、少し綴ってみます。

 そう、あれは19歳の春でした。

 ぼくは、語学学校に1ヶ月間通うためにロンドンを訪れました。初めての海外。語学研修のツアーとはいえ、一人旅。成田空港からドキドキだったのを覚えています。

 それまで教室の中でしか英語を使ったことがなかったぼくが初めてネイティブ相手に英語を使う機会は、飛行機の中でやってきました。となりの席は同じ日本人学生だったけど、後ろはガタイのいい英国人男性。離陸して数時間後、ぼくは「席を倒していいですか?」と一言声をかけることになったのです。たった一言なのに、妙にドキドキ。ぼくは自分の席で何度もぶつぶつと練習してました。そして、ようやく勇気を出して立ち上がり、後ろを振り返り、

Can I...

と言いかけた瞬間、

あ、どうぞ

と流暢な日本語が返ってきたのです。これにはびっくり。というか唖然。ぼくは、結局セリフを言い終えることもできず、ただ笑顔でThanksと答えました。これが、ぼくの、最初の英語使用場面。

 よく考えれば、彼は日本に長く住んでいた人なのかも知れないし、もっと言えば日本生まれかもしれない。ロンドン行きに乗っていたから英国人と思い込んでたけど、そうとも限らない。英語を話すとも限らない。ささやかなできことですが、いろんなことに気づき、考えさせられた場面でした。

 さて、長時間のフライトを終え、ヒースローに着いたぼくは、旅行会社が手配してくれた車に乗り込み、ロンドン市内のホームステー先へと連れて行かれました。同じツアーで参加した日本人学生が3人くらい車に乗ってて、順番に降ろしていく感じでした。ぼくは一番最後に、運転手が「ここだよ」という家の前で降りました。

 緊張しながらベルを鳴らすと、小学生くらいの子どもが2人出てきて、笑顔で出迎えてくれました。海外からの留学生が来るのを待っていた感じ。でもぼくはここで大混乱。なぜって、旅行会社からの事前情報ではステイ先には子どもはいないと聞いていたのです。だから、日本からのおみやげも大人向けのものしか持ってきてない。

 どういうこと?

 頭が大混乱のままのぼくは、子どもたちに手を引っ張られ、家の中に通されました。(つづく)

 あれ? トレーナーの話までたどり着かなかった(笑)ま、でも書き出すといろいろ思い出しちゃって長くなるんで、あわてず少しずつ書いていきましょう。これでしばらくブログネタに困らないし。