英語授業を変えるパフォーマンス・テスト

 先日のJASELE徳島では、私もスピーキングの評価についてワークショップをさせていただきました。メインは、埼玉県英語教育研究会(埼英研)が作成・実施している「1人1分、1クラス1時間でできる!」を売りにしているスピーキングテストのご紹介&体験でした。

 私もこのテストの開発に携わらせていただきましたが、その段階で先生方にアンケートを取り、実際の教室であまりスピーキングテストが実施されていない現状も見えました。埼英研のスピーキングテストは、少しでも多くの学校でどんな形でもまずはスピーキングテストが実施されるようになるきっかけを作りたい、ということと、タスクを先に示して授業できっちり練習したものについて「できるかどうか」を試す授業&テストのサイクルが広がることを期待しています。

 今年も11月頃に実施するテスト問題ができあがりつつあります。埼玉県内の中学校には9月頃に正式申込の案内が届くと思いますので、ぜひ活用していただ、授業に取り入れていただければ嬉しいです。詳細は埼英研事務局の埼玉大学教育学部附属中学校英語科までお問い合わせください。

 さて、徳島でのワークショップを準備していた頃、amazonからのメールで記事タイトルの書籍が発売になっていることを知りました。名古屋外国語大学の佐藤先生と、愛知県の中学校の先生方が執筆されています。

 各学年ごとだけでなく、なんと高校編も! 先日書店で手に取ることができたので、冊数が多いですが思い切って全部買ってみました。

 「はじめに」で佐藤先生からパフォーマンステストの意義と役割についての概論、そのあとに中学校の先生方によるアクションリサーチの報告があり、パフォーマンステストの導入でどのように生徒が変容していったかを示しています。

 そのあとには、具体的なパフォーマンステストが手順、ワークシート、評価規準表と詳細に提示されています。ワークシートなどがそのまま使える仕様になっているのは明治図書クオリティーですね。ちなみにここでいう「パフォーマンス」は「スピーキング」と「ライティング」の両方で、スピーチのようなタスクの場合は、ちゃんとスピーキングとライティング両方の評価規準が載っているのでよいと思います。

 個人的に面白いなと思ったのは、impromptuなタスクの場合、発話した語数などは「流暢さ」として評価したりしますが、これを私は「関心・意欲・態度」の観点で分類してしまうことがありました。でも、それだけの量を産出できるのは、心がけの問題だけでなく身についているスキルに依るだろうあぁと思うので、この本で示されているように「表現の能力」が妥当でしょうね。

 一方で、本書ではあいづちとか会話をつなげるための表現など「コミュニケーション・ストラテジー」についても「表現の能力」として評価するようになっていますが、こちらは反対に「関心・意欲・態度」でもいいような気がします。前にも書いたけど、「関心・意欲・態度」っていうのは、それが表出していないと測定できなわけで、コミュニケーションを継続するためのストラテジーはまさにそういった内面を表出させるための基礎的な「スキル」だと思うからです。(スキルだから表現の能力、というのも成り立つけど、そうすると「関心・意欲・態度」という観点は要らなくなると思います)

 本書で紹介されるテストも、1人1分くらいを目安に、長くても2時間位の授業で完了するような設計になっていて、テストデザインに大切な「現実性」が高いと思います。ただ、そんな短いタスクの割にはテスト中に評価する観点の数が多すぎるように思います。1分のペア会話で5つの観点を測るのは相当訓練が必要でしょう。配点で軽重はついているので、テスト作成者としてはテスティング・ポイントを絞っているのだと思いますが、それにしてもちょっと忙しいかな。このへんはテスト実施者が考えて調節すべきところでしょうね。

 テストティングに関する書籍はやや理論的なものが多くて、こうやって中学校の先生方に使いやすい形で示されている書籍が増えてきたのはよい傾向だと思います。手前味噌になりますが、同じ明治図書から出ている『英語テストづくり&指導 完全ガイドブック』(上山晋平編)で、私もスピーキングテストの章を担当させていただいてます。こちらもご活用いただけると嬉しいです。