今年の高校入試ライティング問題を予想する

 県立高校入試が近づいてきました。3月2日・3日です。

 埼玉県の英語の問題では、他県に先駆けて「5文以上英文を書く」という問題が10年以上前から出題されていて、採点する高校の先生方にはご苦労をおかけしているかと思いますが、おかげで多くの中学校の授業でも「5文以上英文を書く」練習に取り組むようになってきていると思います。入試の波及効果は大きいですね。

 一方で課題もあります。前述のように、高校の先生方は採点に苦慮されているかと思います。当然、採点基準の大枠は県から示されていますが、減点の具体的な規準は各校に委ねられています。でもその各校の規準は公開されていませんので、この高校はどのくらいの細かいことで減点しているのか、ということは見えません。

 もちろんどの学校を受けるにせよミスを少なくすることは大切ですが、一方であまり英語の得意でない受験生の集まる高校では、ミスがあっても英語がたくさん書いてある受験生を評価してくれていると思います。この規準の持ち方によっては、「たくさん英文を書いたがゆえに、たくさん減点されて結局一点ももらえない」という現象も起きかねないので、このへんがこちらとしてはとても心配なところです。

 一番いいのは、それぞれの高校が英作文の採点方針を公表してくれることです。「うちは少しくらいミスがあっても意味が通る文をたくさん書いてくれた受験生に点をあげますよ」「冠詞以外の語法ミスは細かく減点」みたいな方向が示されていれば、対策も立てようがあります。中堅校が一番予想がつかないので、正直特に公表してもらいたいです。

 さて、ここで近年の埼玉県の高校入試ライティング問題のお題と出題形式を見てみましょう。

(PDFはこちら→埼玉県県立高校入試問題.pdf 直
 「1文目は◯◯という文を、2文目は◯◯という意味になる文を、3文目以降は理由を」という形式は昨年度まで3年続きました。この形式に言いたいことはたくさんありますが、これまで同じ形式が4年以上続いた例はありませんから、おそらく今年度形式は変わるでしょう。

 とはいえ、これまでの流れを見る限り、「want toやgoing toを使わせて意志を語らせ、その理由や具体例を述べさせる」というパタン自体に変更はないでしょう。じゃあ、どう変わるのか?

 ここからはあくまで予想と願望です。

(1)文の数指定をやめて、語数指定に!

 これが一番期待しているところです。文の数縛りがあると、接続詞を使って長い文を書くことが入試テクニック的には「損」になるわけですから、まとまった内容の英文を書かせたいと考えている県教委としてはすぐに語数指定に変えるべきです。これならBecauseの単独使用も減らせるでしょう。

(2)イラストや地図、グラフを用いた問題に!

 最近の問題を見ていると、特に1文目はほぼ「和文英訳」です。入試なので自由に書かせると比較が難しくなっちゃうので、作り手としては内容をある程度絞りたいんですね。2文目みたいの「◯◯を表す英文に」みたいな苦しい指示文にするくらいなら、ぜひイラストを活用してもらいたいです。

(3)英文を読んでそれに応える問題に!

 これは新学習指導要領の「統合的」というキーワードを意識すると増えそうなパタンです。ただしあくまで書く技能を測るのであれば、読ませる英文は2〜3文の簡易な内容にするべきでしょうけど。メールへの返信みたいなパタンはありそうですね。
 
 地域で取り組んでいる実力テストも、地域の業者テストも、この入試問題にそっくりな出題になっています。つまり、残念だなぁと思う問題が再生産されてしまっています。そういうテストの場合は採点も機械的におこなわれるので、返ってきた答案を見ると本当にひどいものも多いです。あれじゃ一生懸命勉強している生徒がやる気なくしちゃう。これだけ入試問題の波及効果は大きいわけですから、県教委にはじっくり考えて入試問題を作って欲しいです。それだけで、中学校の授業が変わるんですから。

 とはいえもうとっくに今年度の作問は終わっているでしょうから、今はただ祈るばかりです。今年は3年生担当なので、今まで以上にそう願ってしまいます。生徒たちも最後まで頑張って欲しいです。