入試ライティング問題雑感2012

 ホントは自分で仕掛けた企画がある(のに自分がまだ書いていない)ので、それ向けの記事を書かなきゃマズイところなんだけど、今回の記事はまた別の話。でも、書いてたらすごく関わりのある話になってきちゃったので、このまま企画用記事にしてもいいかな。はい、あとで別にちゃんと書きます。

 さて先日、某県の公立高校入試が終わりました。この入試問題には毎年、いろいろツッコみたいところ中学校教師として改善を願いたいところがあるんですが、今回も例年と変わらないフォーマットだったので、課題は解決しないままでしたね。

 その課題そのものについてはそのうち詳しく書こうと思いますけど、簡単にいえば、用意された問題の難易度があるレベルに偏っていること。もっと言えば「簡単な問題」が少ないということです。ほぼ全員がマルになるような問題も存在してくれないと、そのレベルの学校へ入学志願者を弁別できないでしょ。(実際、英語で差がつくことはほとんどないでしょうねぇ…) 

 今回のブログ企画に関連して中学校卒業時点でせめて「アルファベットくらいはちゃんと書けるようにして欲しい」という高校教師の願いを某所で目にしましたが、それこそあえてそれを問うような問題があっていいと思うんです。実際、数学は単純な「正負の計算」を出題してるんですから。(そして、それくらいは解けるようにしなきゃと入試直前にがんばろうと努力する生徒もいるんですから)

 さてさて、その話はまた今度。本題はいつもと同じでライティングの問題です。

 ここ数年は、キーワードを使って書かせるパターンが続いてました。(昨年の私の感想記事はこちら→「高校入試ライティング問題の行方」)
 

 
 まぁこのタイプは使える語彙とテーマに限りがあるからそう長くは続けられないだろうとは思ってましたけど、今年はマイナーチェンジした模様。どれどれと見てみると…、
 

 
 ん? なんか微妙(笑)

 キーワード指定は引き続きあるんだけど、今年は「必要に応じて適切な形に」していいみたい。まぁseasonがseasonsになるのを想定してるんだろうけど、え、じゃ、bestをgoodにして使ってもいいの?(←そんな小賢しいことを考える奴は別にbestのままで英文が書けるか…)

 受験生としては本来2文目とくっつけて理由を書きたいところだけど、3文目以降に別に「理由」を書くように促されているので、Becauseを単文で使う回答がさらに多く引き出されちゃいそうですね。意図的にそう追い込んでるのだとしたらちょっと意地悪だし、タスクによって余計に引き出される可能性のあるミスを想定していないならそれもちょっとどうなのよという設定だなぁ。

 そして、構成的にはずいぶん「囲い込んだ」問題になりましたね。条件に従うと、1文目は実質「和文英訳」問題で、2文目はゆるーい「キーワードつき和文英訳」で、3文目以降は「自己表現」作文、といった趣き。いろいろ混ざってますね。

 いや、いろいろ混ざるのはいいんです。入試のライティングが「決まった答えのない自己表現」ばかりなので和文英訳とかも出せばいいのに、って言い続けてたので、ある意味ではひとつ私の望む方向に変わった気もします。前述の難易度のばらつきを考えても、いろいろあるのは望ましい。でもそれは、1文目、2文目、3文目以降がそれぞれ別に採点(得点化)されるなら、の話です。

 一般的に、リスニングや文法問題には「簡単な問題」から「難しい問題」までいろいろあるのに、ライティングは基本的にテキストやテストの最後の方にあって「総まとめ的一番難しいチャレンジ問題」みたいな位置づけになることにも疑問を感じていて、前述のように「アルファベットを書きなさい」みたいなのがライティング問題として位置づけられていてもいいと思うんですよね。(関係ないけど、それって「表現の能力」というよりは「言語の知識理解」になると思いますが、「ライティングに関わる知識理解」なんて問題があってもいいと思うんですよね)

 今回の入試問題に話を戻すと、採点は(もちろん高校によって基準の設定は異なるでしょうが)「採点の手引き」にある規準を見るかぎり、ぜんぶまとめて得点化されるようです。 
(2012/03/08加筆)すみません、「採点上の注意」をよく読み直したら、「正確な表現」の項で1文目、2文目、3文目以降でそれぞれ減点できるようになっているので、実質的には分けて得点化する仕組みになってました。つまり「正確さ」に関して言えば、持ち点として1文目2点、2文目2点、3文目以降(最低3文で)3点というわけです。満点は8点なので、「問題に正対」していて「話題が一貫」していれば、ミスがたくさんあっても最低1点はもらえる仕組み。

 ただそうなると、観点の1つめ「問題への正対」と2つめ「適切な表現(話題の一貫性)」の差がほとんどないですね。前述のように、本来「つながり」は問題自体が追い込んでるわけだし、不要な繰り返しなどは「問題に正対」していない、と判断すればいいので、正直観点2は要らない感じ。これだったら(本当はあまり好きじゃないけど)、1文目、2文目、3文目以降で2点、2点、4点という風に単純に配点を独立させちゃって小問のようにした方がそれぞれ書けたところだけ得点化されるのでまだマシだったかも、と思いました。

 ちょっと待て、これだけ「囲い込んで」書かせておいて書かせた英文の「つながりや構成」を観るってどうよ、というツッコミはともかく、結局総合的に得点化されるのだとしたら、文によって条件を変えた意味はあまりないように思います。むしろ、文ごとの役割を「囲い込んだ」せいで、1文目は書けないけど2文目は書けた、って子がいたらどうやって「つながりや構成」を評価するんだろう?という疑問もあり、余計に高校教師泣かせになってしまったような気もします。残念。いろいろ惜しいなぁ。

 一応県が発表した「模範解答」も載せておきますね。

 そうか、よく考えるとこの模範解答こそ、まさに今回のブログ企画テーマ「中学校卒業までに身に付けて欲しい英語力」に対する某県の正式な回答なのかも知れませんね。(ちゃんと更新基準日の2日後に発表してくれたし(笑))

 でも「通知表で3の生徒」にこれが書けるかなぁ。ぼくの感覚からすると、「文」でカウントされるんだから接続詞使ったら損なのにちゃんと使って書いてる時点で、「通知表で4の生徒」以上を想定した模範解答に思えます。県は「通知表で3の生徒」にこれを書くことを求めてるのかな? そうじゃないとしたら、もっとシンプルな解答例も示して欲しかったなぁ。

 改めて、「測定する」って難しいことですね。いろんな人が頭を寄せて作ったであろう入試問題でさえ、これだけツッコミどころが多いんだから、我々の作る定期テストもちゃんと時間をかけて作ってあげたいですね。ああ、そのための時間が欲しい…。