3分英作文の指導アイデア / 水谷大輔

 少し前から気になってた1冊をやっと手に入れたので、ご紹介しておきます。

 著者は埼玉県で頑張っている先生です。随分前に何かの研究会でこの「3分英作文」の発表を聞かせていただきましたが、その頃からしっかりと実践を積み重ねて、1冊の本にまとめてくださいました。

 「3分英作文」というのは、例えば「自己紹介」がテーマであれば、What is your name? / How old are you? / Where are you from?といった質問に「一問一答」形式で答える文を書くことで、それを整理するとまとまった内容の英文になる、という指導方法です。帯活動で毎回3分ずつ一問一答に取り組み、あとで20分でまとめ、書かれた英文をお互いに読む(30分)、というのが基本的な流れでしょうか。(詳細は書籍を御覧ください)

 生徒からすると、眼の前の質問に答えているうちにまとまった作文のネタが溜まるので、負担なく「書けた!」という実感が味わえるよい活動だと思います。また指導する教師の側も、書かせる前の指導に悩んでいる方が多いでしょうから、とても参考になるアイデアですね。

 「一問一答」→「まとめ」→「交流」という3つのステップの中でキモになるは、水谷先生も書かれていますが、最後の「交流」のステップだと思います。読み手を意識したライティング活動ということで、すごくいいと思います。私の実践で言えば「ポケモン」とか「COSMOS」に通ずる「英語教育2.0」的な活動ですね。

 コミュニケーションは「話す・聞く」だけでなく「書く・読む」によっても成立するのだということ。

という言葉には頷くばかりです。

 また、第2章に50個も集められているテーマ一覧には、「この食べ物が大っ嫌い」「最悪の瞬間」など、一見ネガティブなものも含まれています。これもいいですね。読み手を考えると、人の自慢話ばかり読みたくないですし、ネガティブな感情にこそ具体的なエピソードなどが潜んでいたりするものですから。(「好き」な理由は「好き」だけだったりするし)

 というわけで、作文指導のアイデアとしても、授業や活動のデザインを考える上でもヒントがたくさんある1冊だと思います。オススメです。

 さて、あとは発展的な課題になりますが、英作文で書くべき内容を引き出す「一問一答」を、生徒が自ら問いを立てられるようになるための指導がどこかで必要になります。例えば、あるテーマに関するQを羅列して「どういう順番で質問するとよいか」を考えさせたり、「このテーマで書くにはどういう質問が必要か」を考えさせるようなステップも、設定できるかも知れませんね。

 「意味順」もそうですけど、優れたフォーマットを使用する場合は、学習者がそれをどう離れていくかという指導も設定しておく必要があると思うのです。もちろん、それはフォーマットには内在していないので、フォーマットを利用する(させる)先生方がそれぞれ考えながら講じていく必要があるでしょうね。