- 作者: こうの史代
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/01/12
- メディア: コミック
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そしたら、装丁が美しい。
淡い色合いと優しい線のタッチ。もう、それだけで思わずレジに持って行ってしまいましたよ。いわゆる「ジャケ買い」ですね。最近、書棚がいっぱいになりつつあるので漫画はあんまり買わないようにはしていたんですが、レジでお金を払いながら「上」「中」「下」の3巻完結だからいいだろう、と自分に言い訳してました。
内田樹氏も言ってますけど、コピーやネット上の無料の情報が溢れている今、結局「手元に置いておきたい」と思える本にだけ、人はお金を出すようになるんでしょうね。この本はそう思える作品です。
中身も味わい深い。
スクリーントーンを使わず、ひとつひとつ丁寧に描き込まれている画面は、それだけで「昭和」の味わい。シンプルな線なのに、写実的な漫画以上に、表情や気持ちを伝えるんだから、不思議です。コマ割の使い方も、やっぱり男性の作家とは違いますね。スピード感が違う。とはいえ、この「間」って女性的なものなのか、それともこの作家の個性なのか、あまりいろいろ読んでいるわけでもない自分にはまだわかりません。景色とキャラクターの両方を描くときの視点も素敵です。
戦争の時代を描く作品ながら、その時代に「普通に」生きていた人たちのありふれた日常にスポットライトを当てていて、あたたかい気持ちになる不思議な作品です。あんなに苦しい時代でも、人は笑って、恋をして、「生きて」いたんですね。そういう意味では、「アンネの日記」にも通ずるものを感じます。
あまり急いでページをめくらず、少しずつ味わいながら(そして何度も)読みたい作品です。明日「中」巻を買ってこようっと。