今年は越谷市立千間台中学校にて行われました。何気に入ったの初めてかも。よく見ている校舎なんですけどね。
すごくいい授業でした。こういう授業を、初任者研修で(あるいは教員志望の大学生)全員に見せるべきです! 指導者のA野先生もおっしゃってましたが、展開はオーソドックスながら、提示→練習、音→文字の流れが徹底され、最後まで安心して見ていられる授業でした。リズムボックスを用いてのパタンプラクティスは懐かしいような新しいような。でもあれくらい徹底して英語を口にしてると、さすがに覚えてしまいそうですね。生徒の口が疲れる素敵な授業だと思います。
今日の見どころは、文法や語彙のインテイクを目指す会話活動。
こういうのを観ると、感化されやすい自分としては、「よーし、明日から会話やんなきゃ」なんて思ってしまうのです。いい実践って、人にそう思わせるパワーがあるんだよなぁ。でも、待て待て。今はオーラルイントロと発音指導だけだって手一杯なのに。というか、ああいうパタンプラクティスとかスキット風会話活動って、5〜10年前にずいぶんいろいろ試してたじゃん、俺。あの資料はどこへ行ってしまっただろうか。ああ、10年前の自分と5年前の自分と今の自分がバランスよく配合されてれば、なかなかいい授業になるのになぁ。そういうバランスの大切さを実感。
総選挙や事業仕分けの時にも感じたんですけど、1つの事業を取り上げて「何に何億円かけるか」が重要なのではなくて、全予算のうち「何に何パーセントかけるか」を比較するべきじゃないかと思うんですよね。それぞれの党が、相対的に何を重視しているかが見えてくるはず。思い描く総予算額が違う中で金額を議論しても意味がない。英語教育の話も同じで、(まぁ、総時数は概ね決まってるし、みんな同じくらいではあるんだけど)どの活動にどれくらい時間をかけるか、なんだと思います。
今回の授業者F先生のもうひとつのこだわりは語順と品詞。復習でも扱っていましたが、黒板に貼られた語句のカードは文の中での役割に応じて色分けされています。主語は赤、動詞は青、目的語は黄色。ワークシートの説明なんかでも「そこには青い単語が入るよね」って、感覚的に説明されていたところが新鮮。1年生にはいいですね。正進社の「語順ドリル」使ってますけど、その辺の指導と連携しやすそうです。
話は戻って、スキット風の会話活動。
その文法事項(今日の場合はcan/can't)を含めたオリジナルスキットを毎回練習しているそうです。その継続性が素敵ですよね。ここまで徹底してくると、新出語彙や新出文型は、生徒にとって「会話に使える新しい要素」の1つに過ぎないわけです。「また、使えるオプションが増えたぞ」と感じていることでしょう。新しい表現を学ぶ中でも、既習の表現に何度も触れることができるのも魅力です。生徒もただ「読む」のではなく、顔を上げて相手の方を見て「話す」ことを意識していました。指導が行き届いてますね。あれくらいがんばってるなら、最終的にはスクリプトなしでチャレンジさせてもできそうでしたね。
でも、ちょっと疑問があります。
「教科書に出てくる新しい文法事項を学ぶための会話集」をがんばって作ってましたけど、それって、教科書そのものではダメなんでしょうか? どうせ「本文の8割くらいが会話文」という日本の中学校教科書事情を考えると、教科書がそういうスキット集としての役割を果たしてくれる気がするんです。もちろん投げ込みの新しい素材にも触れる必要があるとは思いますが、それだったらなかなか生徒が経験できない「読解の素材」として扱う方が、効果的な気がするんです。確かに現行の教科書には微妙な場面・ページもありますが、その辺は生徒や教師のアレンジのしどころかなとも思います。
だからこそ、こだわるなら、そのオリジナル教材と教科書の棲み分けが大切になってくると思います。
そうでないなら、教室で取り組むべき「話すこと」の活動は、もっと場面やタスクを意識したものであるべきだと思います。会話表現を「覚えて再生する」のではなく、課題解決に必要な表現を「思い出して使う」経験をさせてあげたいなと思います。
ということで、ぼくが今回「持ち込み資料」としてお持ちしたのは、「教科書を英語で説明しよう」というプリント。って、まぁ、今日の3時間目に使ってたプリントを増刷りして持って行っただけなんですけど。今、2年生ではオーラルイントロで練習した表現を使って、教科書の内容を再生する練習をしています。その活動に使っているのは、本文のイラストとキーワードだけが印刷されたプリントです。「こういうことを使えるためには、canが便利だよね」なんて思い出させ方をさせたいんですよね、授業中に。
英語_教科書言えるかな.pdf
今回の研究協議は「継続的な『話すこと』の指導」というお題でした。みなさんが持ってきてくださった資料は、
・いわゆる弾丸インプット
・ディスカッション用ワークシート
・他者紹介用のデータカード
・インタビューシート
など多様でした。数としてはいわゆる弾丸インプット系の資料が多かったのですが、「そのインプットされた表現をどう使わせるか」というところが一番気になりますよね(そしてあまり語られることがない。) そして「話すこと」というと、やっぱり「2人での会話」を想定する人が多い。まぁ、スピーチ指導について持ってきてくださった方もいらっしぃましたが、私みたいに、「原稿がない中で独白する」ことを想定している人は、やはりあまりいないんですね。邪道なのかな。
ともあれ、いろんなことを考えさせられる授業で、何年も経験したベテランの先生方がご覧になっても、学ぶところの多い授業でした。授業者の先生はもちろん、指導者のA野先生、そして資料を持ってきてくださったり、熱心に協議に参加してくださった参会者のみなさまに大感謝。
最近は、なかなか出張に出してもらえない状況もあるかと思いますが、こういう素敵な授業研に一人でも多くの方に足を運んでもらえるようにしたいですね。