2011年05月のご報告

 今月は定期テストがテーマ。しかも入間地区のサークルSITEとのコラボ企画ということで、埼玉県内の2つのサークルが同じ素材、同じテーマで取り組んでみました。

 実際のテスト問題をご提供いただいたので、いろいろな話題が出て盛り上がりました。

 【言語の知識・理解】の問題では、語彙の知識の確認方法から「並べ替え問題」にふさわしい文法項目についてなどいろいろと。そういえばこの「並べ替え問題」って、いったい学習者のどういう能力が試されてるんでしょうね。音読をたくさんやって、自然な語順が体に(目に?口に?)しみついていれば解けるのでしょうか。それともやっぱり同種の問題をたくさん解いて、問題形式に慣れることが早道なんでしょうか。この問題ができるということは、英語のどんな力がついたといえるのでしょうか。悩みは尽きません。

 話題に上がった問題を眺めながら、結局ふだんの授業のどういう取り組みがそのテスト問題につながっているのかを、あまり自覚しないで問題にしてしまっているなぁと自省しました。

 【表現の能力】のライティング問題では、やはり採点基準が話題に。個人的には「1文2点で減点方式」から「語数でカウント、観点別採点方式」がおすすめなんですけど、そのあたりは次号の「STEP英語情報」に拙稿を載せていただくことになったので、そちらをご参照いただけるとうれしいです。

 もうひとつ気になるのはやはりライティングの「お題」について。問題用紙にも踊る「自己表現」の文字が気になりました。自分のリアルな気持ちや出来事を答えさせる問題が多くなってきてますけど、練習段階はともかく特にテスティングの場面ではどうなのだろうという疑問があります。

 今回は「行ったことがないところで、行ってみたいところについて書く」というお題でしたけど、「別に行きたいところなんかない」という生徒はどうしたらいいんでしょうか。「テストなんだから書けることを書いちゃえばいいんだよ」というストラテジーを持たず、真面目に一生懸命悩んじゃう子が損しちゃうテストは嫌だなぁと細かいことを気にしてしまうのです。まぁ、「友達の質問に『別に…』と答えるなんて『コミュニケーションへの関心・意欲・態度』が涵養されていない」と評価することもできるのでしょうけど、それは「表現の能力」とは別のところで測るべきかなぁと思います。(そこまで考えて、それを「関心…」で評価している方はあまりいないでしょう)

 さて、SITEの方では「授業とテストのつながり」が話題になりました。

 ご提案された先生は、ライティング問題なども、テストで突然出すのではなく、授業中に何度も練習したお題を出題しています。同じトピックについて会話練習で、リスニング問題で、実際に書く問題でと何度も触れる機会をつくるような丁寧な指導をされている方もいます。ただ、生徒が安心してテストに取り組めるようになる反面、授業で身につけた力を使って類似の(同レベルの)問題に挑戦する、という機会が減っている心配もあります。

 一番わかり易いのは読解問題でしょうか。教科書本文をそのまま出して、和訳を書かせてしまうとただの「記憶力テスト」になっちゃいますもんね。「つながり」や「丁寧な指導」を考えつつ、生徒にとってチャレンジングな課題を設定することが(難しいけど)大切なんだろうなぁと感じています。私にとっても、今後の大きな課題の1つです。

 ということで、2つのサークルに参加して、いろいろな方のご意見を聞くことができて、とても勉強になりました。テストを見ると(あるいはテストに対する意見を聞いていると)、その人の日頃の授業が見えてきてしまうから面白いですね。←怖いですね、とも言えますけど。そういう意味で、今回勇気を持って自分たちのテストをたたき台に提供してくださった先生方に感謝感謝です。

 「いい問題を作りたい」という願いを持っている先生は多いものの、「しっかり精査する時間がない」というのも大きな悩みです。日頃の中学校での教師の仕事ペースを考えると、確かにそれもよくわかります。私も前日の夜中に慌てて印刷しているような自転車操業でしたから。本来であれば、学期の初めに「学期末にはこういうテストで力を測りたい」とテスト問題を作ってしまえるような時間があればいいんですけどね。それこそ、教員に必要な「研修」の時間のあるべき姿だと思うんですけどね。

 まぁ、今後教師の仕事量が急激に減ることはあまり期待できないですから、まずはこういう研修を通して「いい問題」の具体や理念をシェアしながら、自分なりのパタンが蓄積していければいいなぁと思います。

 そういう場所として、自分のサークルが地域の先生方のお役に立てればいいなぁと願っています。

英語テスト作成の達人マニュアル (英語教育21世紀叢書)

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無責任なテストが「落ちこぼれ」を作る―正しい問題作成への英語授業学的アプローチ (英語教師叢書)

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