一対一の指導が生み出す距離感と信頼感(全英連レポート1)

 昨日、全英連に参加するために奈良に行ってきました。

 この大会では靜先生が記念講演(公演?)をされましたので、それを楽しみに駆けつけたのですが、ただ聞くだけじゃなくてステージに上げていただき、院生メンバーで一曲歌って踊って来ました(笑) 曲は一部で噂の「一本満足」×「スティーブ・ジョブズ」の「人生満足チャンツ」です。途中でまさかの歌詞飛びがあって、パーフェクトな演技にはなりませんでしたが、最後まで一生懸命がんばりました。雰囲気は伝わったかなぁ。

 午後は、ステージ上でライブでおこなわれる公開授業を参観しました。その授業を見ていて、ひとつ気がついたことがあります。それは、生徒の表情についてです。

 中学校と高校の授業をひとつずつ参観しましたが、授業中の生徒の表情がかなり違う印象でした。ふつう中学生と違って、高校生って大人なので、比較的冷静と言うか、悪く言うと白けていて、表情をそんなに出さないかなぁと思うのですが、今回授業を見せてくれた高校生たちは、とても表情が豊か。授業が始まって、先生が最初の一言を言った瞬間からそんないい雰囲気でした。

 一方で中学生の方は、大ホールのステージで授業という特殊環境ですから当然ですが、緊張しているのか表情が硬い。先生の緊張が伝わってしまったのかな、とも思いますが、授業を通してその雰囲気のままでした。

 高校生の方が精神的に余裕があった、あるいは、先生がうまくリラックスさせられた、など考えられる「違い」の原因はいくつかあると思いますが、もうひとつ考えられるのは、授業中の生徒と教師の距離感に由来するのでは、ということです。ここでいう距離感とは、物理的と精神的の両面においてです。

 高校の授業では(靜先生が指導助言者でしたから)「グルグル」をやりました。つまり、授業中に、生徒全員と一対一の指導場面が何度もあったんです。一方で中学校の授業はペアワークが中心で、先生は巡回してるけど、それほど深く生徒にコミットしない。「促す」「見守る」くらいのスタンスです。

 「グルグル」のメリットのひとつは「生徒と近い距離で関われる」ということです。最後の指導講評の中で靜先生は今日の授業について「まだまだソフトな感じで生徒と距離感がある」と仰っていましたが、それでも中学校の授業に比べてより近い距離で生徒と関わっていましたので(そしてもちろん、それはこの日だけの話ではありませんので)、教師と生徒のより強い精神的な結びつきが生まれていたのだと思います。そういう「信頼感」や「安心感」が、生徒の表情に表れていたのではないか、と思ったのです。

 列を作って順番に先生の指導を受ける姿を見ていたらふと思い浮かんだのが、野球のノックやバレーボールのレシーブ練習の場面です。

 この2つの競技って、私はたまたま両方とも顧問の経験があるのですが、これらの競技はコーチ(教師)と選手(生徒)が一対一で指導できる場面が多いので、選手がコーチに対して「この人に指導してもらった」という感覚を持ちやすいように思います。だから信頼関係が築きやすい。指導者の方も「指導した」という実感を持ちやすい。(それゆえに熱血になりすぎてしまう危険性ももちろんあります。実際「熱い」顧問の先生が多い競技ですね)

 もちろんノックは練習方法としてはあまり効率がいいとは言えません。一回にボールを受けられる人はたった1人だけですから。だから、もちろん練習メニューの中には生徒同士でボールを動かして、ボールに多く触れられる練習も設定します。でも、コーチがチーム作りをする上で、この「ノック」という練習が個々の技術向上のためにも、またコーチと選手の精神的な結びつきの意味でも機能している部分があるんだと思います。

 別に「グルグル」にこだわる必要はないと思います。どんな形にせよ「生徒と一対一で関われる場面」をどうやって確保するかが重要なんだと思います。生徒に「この人は、私のことを指導してくれる人だ」と実感させ、個々の課題を解決してあげられていれば、一斉でやるときにも、ペアでやらせるときにも、生徒の動きの質と量が変わってくるのではないか、と思いました。

 全英連はいろいろなことを考えるきっかけになりました。その他については追々。