少人数授業と技能教科の未来

 現任校はずっと英語科で「少人数指導」を実施してきた学校です。しかも少し前まではさらに「習熟度別」にも取り組んでいて、当時の英語科の先生方はなかなか苦労されていたようです。おそらくクラスサイズを小さくするメリットよりも、複数の教員で1つの学年を担当して、横並びで教えなくてはならなくなるデメリットの方が大きかったのではないかと思います。

 音読やスピーキングなどの音声指導やライティングなどの文字指導といったアウトプット系の指導は、教員一人あたりの生徒数が少ないほうが一対一で指導できる場面が増えて手厚く指導できるのは確かです。一方で、読解やら英文解釈やらインプット系の指導は、ひとりの教員が同じように指導したほうが、定期テストなどでの生徒の混乱は少なそうに思います。

 英語科は特に教師の教え方にバラエティの多い教科だと思います。ゆえに、1つのクラスを半分に分けて複数の教員で担当した場合、クラス内であまりに違う教え方をされるのもトラブルのもとになりそうだし、かといって「統一ハンドアウトで同じように教えましょう」というのも教師の個性やこだわりを失わせてしまってつまらない。「少人数指導」は課題が多いように思います。

 今のところ思い浮かぶ改善策は2つ。

 ひとつは、他教科との組み合わせによる少人数指導。本校では数学科も少人数指導をしていますので、クラスの半分に英語を教えている裏番組で残り半分に数学を教えてもらえばいい。次の時間は逆の組み合わせにすれば結果的にひとりの教員がひとつのクラスを責任持って面倒見ることができます。我ながらいいアイディアではありましたが、数学科は習熟度別での指導を希望しているので今回は断念。

 もうひとつは、1つのクラスを複数教員で担当(いわゆるティーム・ティーチング)しつつ、場面や時期によって、教室内で生徒を2分割してそれぞれを「少人数指導」する、というアイディア。読解やリスニング指導などは一斉に、音読やスピーキング指導、ライティング指導などは「少人数」で対応するというフレキシブルな使い分けが可能です。名付けて「教室内少人数指導」です。

 英語科のティーム・ティーチングというと(ALTとの場合も含めて)、T1が前で授業を進めている間、T2は教室の後ろで見守ってて、時々前に出てきてスキットの相手役を演じたらまた後ろに下がる、なんてパターンが多いように思います。これって、正直T2がつまらない。

 それより、教室内で生徒を半分に分けてできる活動をいろいろ取り入れることで、T2のお仕事も増えるし、生徒の活動量も増えると思います。今年は、そういった活動をたくさん考えることがひとつのテーマとなりそうです。せっかく長期研修中に学んできた「グルグルメソッド(下記文献参照)」や研究してきたライティング指導がまさにこういった場面で大活躍しそうで、個人的にはとても楽しみです。

英語授業の心・技・体

英語授業の心・技・体

 
 さて、関連して気になることがもうひとつ。

 ひとつめのアイディアである「他教科との組み合わせ少人数授業」が数学科とうまく調整できなかったことを職員室で話していたら、隣にいた家庭科教員がひとこと。

じゃあ、家庭科と英語科で組み合わせて少人数授業やろうよ。こっちだって、教員一人あたりの生徒数が少ない方が絶対に丁寧に指導してあげられるんだから。

 おお、これは面白い。クラスの半分が英語をやっている間に、もう半分は家庭科をやってて、別の時間はその反対、というわけですね。週の授業時数が違うから技術家庭科だけでなく美術科とかとも抱き合わせる必要があるけど、実現したら面白いアイディアかも。

 この言葉には、実は技能教科の先生方にとって切実な問題が絡んでいます。生徒数(クラス数)が減ってきている関係で、技能教科の先生方の持ち時間がすごく少なくなってきていて、小規模校では週10時間に満たない先生も。そうなると、他教科教員と持ち時間のバランスを取るために、免許外の他教科の担当をさせられたり、場合によってはその教科の正規教員を学校におかず、非常勤講師が2校を掛け持ちで指導する、なんてことになることもあります。実際、現任校にも美術科の正規教員がいません。

 行政などが「学力」という言葉を語るときにも技能教科の存在が無視されている気がするし、英語の「学力」だって、紙の上でだけ語られがちです。(それに対抗して少し前に、技能教科の実技による「学力調査」を実施した自治体がありましたね) 行政主導で英語科や数学科で加配教員が配置され少人数指導を取り入れているのも、そういった数字だけを追い求めての施策に思えます。本当なら、教科教育以外の面でも学校に多大な貢献をしてくれるはずの技能教科の先生方を各校で有効に活用する意味でも、技能教科でこそ少人数指導が広がるべきだと思います。

 その際、英語科もぜひ「技能教科」にカウントしてもらいたいですよね。だって学校の外では「先生1人に生徒40人」の絵画教室やピアノ教室が存在しないように、英会話学校だってどこも少人数で手厚く指導しているはずですから。