中学生のための学習英文法書あれこれ

 一応通常業務は一段落したんだけど、これまで溜め込んでた書き物が滞ってて、いろいろご迷惑おかけしております。このお休み期間に必死にがんばります。ひー。でもそうやって発表したり、書かせていただけるのって幸せです。そのたびにいろいろ考えるので、なにより私の勉強になります。

 さて、現在発売中の「新英語教育」にも拙稿を載せて頂いています。

新英語教育 2012年 09月号 [雑誌]

新英語教育 2012年 09月号 [雑誌]

 といってもBOOK REVIEWのコーナーなので、ホントにちょっとだけですけど。ちなみにご紹介したのはこの本。詳細はレビューをお読みください。 学習英文法シンポ以来、こんな私でも文法書に少しずつ関心を持つようになりました。といっても、あくまで私の場合、中学生のような初学者向けの文法書としてはどんなものが適切なのだろうか、という視点です。最近は一般の「英語に再挑戦」の人向けも意識してか「わかりやすい」とか「やさしい」なんてシリーズもたくさん出てるので、そのへんもいくつか購入して眺めています。

 ただ、どれもあくまで中学校の教科書シラバスの枠組みの中で、文法の説明や語の選択方法を単純化して、シンプルで「わかりやすい」ものにしている、というのが工夫点という感じです。(中にはフォントが「やさしい」だけかなぁと感じるものもあります) 説明の後の問題がいきなり「疑問文に書き換えなさい」とかいうのはちょっと味気ない気もします。というか、英語が使えるようになるための「わかりやすい」本というよりは、他の問題集に載っているような問題ができるようになるための「わかりやすい」本といった趣きですね。

 こういうのしかないのかなぁ?

 なんてことを考えていたら、前述の学習英文法シンポでもご提案され、その後3月のELECライティングシンポでご一緒させていただいた京都大学の田地野彰先生から、一冊の本が届きました。(どうもありがとうございます!)

「意味順」で中学英語をやり直す本

「意味順」で中学英語をやり直す本

 おお、これは面白い!

 「意味順英作文」が出た時に私がこのブログに書いたレビュー記事でも「「意味順ワーク」みたいな教材があったら面白いでしょうね」なんて書いてますけど、これはまさにそんな教材になっています。書き込み式で使えます。

 並びはいわゆる中学校の教科書シラバスですが、そのすべてを「意味順」という枠組みで統一して扱っているのが素敵です。これまで「be動詞」「現在進行形」「受動態」などとそれぞれ別のもののように教えてきましたので、「せっかく前のやつがわかってきたと思ったらまた別の文法かよ」と感じていた学習者にとっては、どの部分が違ってどの部分が共通なのかをはっきりさせながら学習できるので、とても「わかりやすい」と思います。

 誌面は4ページ構成で、1ページ目に簡単な(もちろん意味順ベースの)文法説明、2ページ目にキーセンテンスと例文集、3ページ目は場面イラストと会話文、4ページ目は穴埋めドリルになっています。イラストと会話文が載ってるので、一見文法書というより教科書とかラジオ英会話のテキスト風です。ドリルもあくまで英語での発信を見据えて、シンプルに言葉を並べればできるような問題ばかりです。いわゆるテストのための問題、みたいなものはありません。

 これ、このまま中学生が使っても大丈夫ですけど、このイメージでもっと中学生に特化したワークがあったら面白いだろうなぁ。ただ、その場合、扱う側の中学校教師が授業の中で意味順指導を継続的にやってないと生きないだろうなぁ。そして、重箱の隅をつつくような問題ではなく、基本的なところがしっかりと身についているかを確認する(測定する)ような問題がテストに求められますね。入試にも、学力調査にも、定期試験にも。

 ぼくが最近すっかり「意味順」推しな理由は、そこにあります。特に中学生段階ではこのくらい身についてればいいじゃん、という「このくらい」の内容を精選して、そのかわりどの中学校を卒業した生徒でもこれはちゃんとわかってる / できる、という状態を作らないといけないだろうな、と感じています。「意味順」はそんな大切な「このくらい」のひとつの形だと思うんです。

 素敵な本ではありますが、大人になってからこの本で「やり直す」必要がないように、中学校時代から基礎となる部分をしっかり身につけさせてあげたいなぁと改めて思いました。