関東甲信越英語教育学会2012@群馬

 どうしようか迷ってたんですけど、結局行って来ましたKATE2012@群馬。今年は共愛学園前橋国際大学が会場でした。行きは電車に乗り遅れるわ、次の電車はダイヤ乱れて乗り換え接続乱れてホームで45分待たされるわで、なかなか苦労しました。近くて遠い群馬県

 自由研究発表タイムはいつものようにライティングを中心にお部屋巡り。やっぱり「自己表現」の効用を説く発表が目立った気がしたけど、自己表現を繰り返すことで自己表現力(←そういう力があるのかはわからないけど)が向上しているのかはわからないですよね。むしろ、どうやってその下位技能を高めるのか、というところが個人的には一番気になるところなのです。

 さて、今回一番気になったのはシンポジウム。

 国研の教育課程調査官、向後秀明氏を招いて「英語の授業は英語で」に関するシンポでした。他にL1使用の効用を説く松沢伸二先生(新潟大学)と中高での実践を提案して下さった先生2人を合わせた4人がシンポジストとして登壇しました。

 向後氏のお話にはかなりがっかりしました。正確にはお話そのものよりそのお話ぶりに、です。

 内容は要するに「英語の授業は英語で」ということを改めて徹底したかったんだろうけど、「学習指導要領を守れないなら学校を去れ」(←なぜかここだけ英語で)と言ってみたり終始高圧的でした。

 高校レベルで「英語の授業は英語で」やることでどんな効果があるのか、どんなやり方があるのか、ということを語ってくれるのかと思っていたのに(そういう内容もあったにしても)ほとんど記憶に残っていません。あれじゃ現場と行政の「コミュニケーション」が破綻してしまいます。小学校外国語活動が始まる前に同じくKATEのシンポでお話された直山調査官が、「無理せずできるところからはじめましょう」と小学校の先生方の心理的ハードルを下げるべく行脚されていたのと対照的です。

 私は中学校教師ですので、高校における「英語の授業は英語で」やることの意義や難しさをちゃんとは理解できてはいませんが、そのねらいが訳読「偏重」の現状を打破して生徒が英語を「使う」場面を増やしましょう、ということであれば、とても自然で前向きな提言だと思っています。ただ、その結果にたどり着くための「ひとつの」方法が「英語の授業は英語で」なのかも知れませんが、それ以外のアプローチを一切認めない、という姿勢は疑問です。

 国がやるべきことは「英語の授業は英語で」と「方法」を縛るんじゃなくて、英語を英語で教えたら身につく(と文科省が想定している)力の具体を示して、それが身につく授業を求めたり、身についているかを測ったりすることで「結果」をコントロールすることではないでしょうか。Can-Doリストなんてのも最近のBuzzワードですが、本来はそれこそ国が示すべきものであって、それができるようにする手立てを考えるのが私たち英語教師の仕事だと思うんです。今はやってることが反対ですよね。やり方を国が指定して、リストや評価基準を現場の教員が忙しい中考えてる。

 向後氏のお話を聞いていると、大切なのは「結果」ではなく「方法」だとお考えなのでは、と思えてきてしまいました。仮にそう思ってなかったとしても、そう伝わってしまうお話ぶりが残念でした。

 さて質疑応答ではフロアからいろんな意見が出ることを楽しみにしていましたが、「英語は英語でやるということはもう決まっているので、是非論や賛否ではなく、建設的な発言を」と最初に司会者が釘刺しちゃったので、その時点で「シンポジウム」が「伝達講習会」になっちゃいましたね。そんな空気の中で学芸大の金谷先生が、現場で困っているという私学の非常勤の方の質問にただ「がんばれ」と答えていた向後氏に「それじゃ無責任。国はどのようなサポートをしてくれるのか?」と斬りこんで下さったのは本当にありがたかったです。

 シンポ後、客席に残ってたらKATEのスタッフの方に「このシンポジウムの感想をニューズレターに書きませんか?」とお声かけいただきました。「何書いてもいいの?」と聞いたら「なんでも大丈夫です!」って言ってたけど、こんな内容載せられないだろうなぁと思い(笑)、今回はお断りしました。ま、そちらには一昨年原稿書かせていただきましたし、今回はその分ここで言いたいこと書きましたから、いいですよね?

 他にもコメントしておきたい発表とかあったんですけど、今回はこのシンポのことでいっぱい。時間があれば後日また振り返ります。