中学生向けのTask-basedな教科書が欲しい!

 ブログ企画を呼びかけておいて自分でなかなか記事が書けないままで申し訳ありませんでした。告知も遅かったので、今回は参加してくださった方も少なめです。また、話題的にいろいろなしがらみから書きづらい、という方もいらっしゃるかと思います。それでも、こういった記事を通して、みなさんに立ち止まって考えていただく機会になればいいと思っていますので、今後も細々と続けていきたいです。

 ということで、遅くなりましたが、私の意見を書いていきます。中学校の教科書についてです。

 私が一番気になっているのは、「本文」と「タスク」の扱いです。前回の改訂で開隆堂のSUNSHINEが割りと大胆な変更を行いました。左側に基本文(を含む短い会話文)の他にリスニングやペアでの会話練習タスクがあって、右側にいわゆる「本文」がある感じです。

 「教科書ただ説明して、ちょっと音読しておしまい」みたいな先生もまだ結構いるから、授業の中に少しでも「活動」を取り入れてもらうきっかけにしたい、という著者の強い願いを感じる意欲的な改訂だと思います。教科書のメインページに「活動」があることで、「やらざるを得ない」と諦めてやってくれる人もいるだろうし、何をやらせていいかわからないという先生方からすれば、わざわざプリントを用意しなくても教科書を開けばすぐに活動できるのは便利だと思います。

 でも、昔の記事でも書いていますが、私はこのスタイルが好きではありません。むしろ一抹の不安を感じます。そもそも、その「活動」を考えるのが教師の仕事なのに、そこを他人に任せちゃっていいの?という思いからです。

 ただ最近は少し考えが変わりつつあって、良質のものであれば、教材づくりはある程度教材屋さんに任せて、我々は「指導」と「評価」の方に集中するべきじゃないか、と思うようになってきたんです。

 ただし、「良質のものであれば」という条件付きです。

 現在の教科書に付いている「活動」はタスクというよりパターンプラクティスの素材のようなもので、題材や仕掛けも中学生の生徒が面白がって飛びつくようなものではありません。あくまで「本文」のおまけです。「パターンプラクティスの素材」と割り切っているならそれでいいです。でもあれを「活動」とか「タスク」と勘違いして、授業の中で十分に活動はさせたと勘違いする教師が増えてしまったら、退屈なパターンプラクティスだけが教室増えてしまうわけで、罪深いものになるような気もします。

 ということで、今回の私の具体的な提案は、教科書をタスク中心のものに変えちゃいませんか?ということです。

 リスニングがあって、パタプラがあって、会話もどきがあって、読解があって、という細切れではなく、もういっそ1つの大きなタスクがレッスンの中心になっているような教科書、作れないでしょうか。英会話学校用のテキストなんて、そんな感じだから、物理的に作ることは可能だと思います。あとは、それが検定通るか。(というか、そういうのが通るような検定や文科省であるか、ですかね)

 いわゆる「本文」も思い切って削っちゃいましょう。スキットの台本として、あるいは、読解の素材としての英文はもちろん残しますが、レッスンによっては「本文」がないところがあっていいと思います。活動で語彙もいくらでも補えますし。

 目的さえあれば、「本文」は別に害悪ではありませんから。現状では「本文」があることで授業内容が読解に偏重しがちだし、3年生くらいになると(文字に関する)習熟度の差のために、授業が全然わからない生徒が増えてしまう。教科書に活動もどきが増えたけど、「本文」は減ってないので、やたら忙しそうに教科書を進める先生も多いと思います。

 シラバスも文法ベースから、タスクベースに切り替えます。Can-Doだなんだという割には、教科書は文法シラバスから抜け出せてないし、評価を考えてもCan-Do的なものと学期ごとの評価評定算出のパラダイムに違いがあって、まじめに考える人ほど混乱を起こすような気がします。

 このへんは浦野先生(北海学園大学)のお考えにかなり影響を受けていますけど、Task-basedの教科書にすることで、1年生でも3年生でも同じようなタスクに取り組みます。だけど、年々活動内で使われている語彙や構造の種類は豊かになり、正確性の質は高まっているなら、それでいいと思うのです。

 大学入試を4技能に、とか、教師の英語力が、という前に、学習指導要領をCan-Do形式にしちゃうとか、教科書をTask-basedにしちゃうとか、国がリーダーシップを発揮するなら、そういうマクロのところだと思うんですよね。その中で、我々英語教師が、どんなミクロな挑戦を積み重ねられるか、だと思うんです。

 中学生向けのTask-basedな教科書、たいへんそうだけど、いつか作ってみたいなぁ。

 この記事は、『英語教育ブログ』みんなで書けば怖くない!企画に参加しています。他の方々の記事はこちらで読めます。→第8回「こんな教科書が欲しい!」まとめ