教科書の役割、教師の役割

 6日は関東甲信越英語教育学会(KATE)神奈川大会に行ってきました。

 一昨年は埼玉大会(獨協大学)でワークショップのお手伝い、昨年は茨城大会(筑波大学)に見に行って、今回で3回目の参加。これまでぼく自身もあまり縁のなかったアカデミックな集いだけど、実際に参加してみて、現職の中高教員ももっと足を運べばいいのに、と思います。まぁ、夏休みとはいえ忙しい時期なんですけどね。

 今年は震災の影響で1日開催。発表数も限られちゃってるので、じっくり選んで発表を聞いてきました。ライティング関係の発表が少なかったのがちょっと残念。でもいろんな人達に会えて、楽しい一日でした。

 さて、午後にはセミナー/ワークショップがあったんだけど、ぼくは「こうなる、新教科書!:新学習指導要領で中学教科書が変わる!」というセミナーを聞いてきました。教科書会社の編集部の方々がそれぞれの新教科書に込めた思いを語り、意見を交換する、という流れでした。

 フロアからの質問を受け付けてくれたので、思わず手を挙げちゃいましたよ。

 先日ブログでも書いたけど、新しい教科書は素材だけでなく、それを学ぶためのタスクも多数用意されています。若い教師も増える中で、誰でもすぐに授業ができるような「親切設計」なんだけど、本当にそれでいいの?という疑問があります。そもそもそこが英語教師として一番楽しい部分なのになぁ、という思いもあります。ということで、そう訊いてみたんだけど、教科書会社さんからは「教科書に示したタスクは最低限のライン」「ワークシート作る手間が省けて助かるって声もあるのに…」「教師が同様のねらいを持った、より優れた活動を仕掛ければいい」というお答えでした。

 ぼくとしては、もう一歩踏み込んで、「教科書がタスクや練習方法まで設定してくれるとしたら、それを使う教師の役割(仕事)は今後変わっていくのか?」ということを訊きたかったんだけど、ぼくも緊張しててあんまりうまく伝えられませんでしたね。ちょっと消化不良。

 きっと靜先生だったら、「そうだよ、そんな活動なんか別に何でもいいんだから準備なんかにエネルギー使ってないで、教師は授業時間中の生徒への指導そのものに専念しろ」とか仰られるだろうなぁ。「今まで教材研究してた時間で教師の英語力そのものを磨けるから、むしろいいじゃないか」とも。いや、ぶっちゃけ、教科書会社さんからそれくらいの言葉を聞きたかったくらいなんですけどね。

 これまでは「よい活動を考えつく教師=すごい教師」って位置づけだったように思うんだけど、別に世の中の英語教師全員がそれぞれオリジナルの、そして効果のある活動を思いつく必要もないわけで、すでにある優れた実践は、どんどんシェアされていくべきだと思います。で、結局、誰のアイディアだろうが、その活動を通して生徒に一番力をつけられた人が「すごい教師」なわけですからね。

 なんて議論も期待してたけど、そもそも会場に中学校英語教師はあまり多くなかったかもしれません。その他に「評価基準」と「語彙」についての質問が続いて終わってしまいました。

 各教師が知恵を絞ったオリジナルの「活動」を公開するのが巷の「研究授業」では一般的だったんだけど、今度はどうなっていくんだろう? 教科書にある「活動」をそのままやるとして、どんなところに教師としての力量が問われるのか。そういう意味では、来年以降の研究授業が楽しみでもあります。