「ノートづくり」を考えよう

 さて、副教材についての記事でも触れましたが、教科書準拠ノートを使わなくなった経緯についてもう少し書いておこうと思います。

 準拠ノートというのは、ノート見開きで教科書1セクション分の内容をまとめるようにデザインされているノートで、左上に新出単語のつづりと意味を書く欄があって、その下に教科書本文が書き写したり、英文の下や右側のページに和訳を書いたりできるようになっています。各ページの基本文のまとめが予め印刷されているものもあります。

 こういったノートを使った典型的な授業例とその課題を改めて整理してみようと思います。

 まず、「予習」として新出単語を書き出し、辞書を使って意味を調べて書き写します。そして教科書本文を左側に書き写し、自力で和訳をしてくることを求められます。

 授業中は、予習で書き写してきた本文にポイントを書き込みます。「関係代名詞のthatを四角で囲む!」なんて指示が飛び交います。さらに「まとめ」として教師が板書した文法のポイントを生徒が書き写す時間が設けられます。

 この予習から授業中の作業までの流れがほぼルーチンとなって、毎ページ繰り返されていくことになります。

 さて、疑問点です。

 まず、まだ読み方も意味もわからない英文を呪文のように書き写すことにどれくらい意味があるのか、ということです。本当にアラビア文字でも書き写すかのように手だけを動かしてくる生徒も一定数いると思います。なので、私はこのノートを使うにしても、授業で内容を把握し、音読できるようになった英文を書き写してくることを「復習」として課しています。

 次に、予習作業の時間的なコストパフォーマンスの問題。特に女子生徒などは色ペンを使って綺麗に書いていますが、私のように字が雑な生徒のノートだと、あとで見返してもあまり役に立ちそうにありません。何より、そんなに綺麗にまとめても、そのまとめをもう一度見返すようなタスクが、授業で設定されていないことが多いのが問題だと思います。

 さて、このノートは、こういう古典的な「ノートづくり」が少しでも楽に継続できるように設計されたノートです。単語を書く欄などが予め印刷されているので、時間的にはずいぶん負担軽減されますが、そもそもそういう「ノートづくり」を奨励していることには変わりません。

 そして、「ノートづくり」のあり方は、教師の授業スタイルや生徒の学習スタイルを規定しています。つまりこうした「ノートづくり」を前提とした「意味の確認」と「文法の解説」がメインになっている授業が、中学校でもまだまだ多いということです。

 試しに「英語 ノート 作り方」で画像検索してみると、そんな古典的なノートの例がたくさん出てきますね。私も中学生の頃にそういうふうにノートを作っていましたが、こういうやり方が今でも本当に浸透しているんですね。

 
 英語教育に関する調査・研究をしているARCLEという団体の調査でも、中高生がこういう「ノートづくり」を代表的な「英語学習」の方法だと考えている様子が伝わってきます。そして、そういう状況を「教科教育法」を指導している大学の先生方はあまり知らなかったりします。学生もそんな方法は大学で教わらないのに、教壇に立つとそんなやり方を生徒に強制していたりするのが不思議です。

参考:「中学生の英語学習実態に関するインタビュー分析 ―質的分析手法の TAE を用いて―」(2014年度関東甲信越英語教育学会(KATE)第38回千葉研究大会)

 ノート指導は1年生からの継続性もあるし、担当教師が代わって途中でやり方を変えると生徒も混乱するし、前の担当教師の指導法を否定していると捉えられかねないので、なかなか変えるのが難しかったりします。私は、いろんな英語教師にいろんなやり方を教わるほうが生徒は幸せだと思っているので、「こういうやり方もあるよ」と指導するようにしています。そして、今年もこれまでの継続性からノートづくりをさせている学年もありますが、少しでも学習効果が高まるように「復習」のために活用するようにしています。

 「ノートづくり」は古くて新しい、遠くて近い、小さくて大きい問題だと思います。新年度はスタートしてしまったので、きっとそれぞれのやり方で生徒も取り組み始めているかと思いますが、始めちゃったらそのままではなく、生徒が実際になにを学んでいるのかをじっくり見極めながら、よりよい方法を柔軟に考えていくことが大切だと思います。

 私の場合は、あのスタイルのノートで何ができるか、そしてあのスタイルをやめた場合ノートで何ができるか、両方を考える機会になりそうです。