生きた例文をインプットするワーク

 教科書準拠ワークの文法問題は、あくまで言語的な操作をさせるのが目的で、新出文型のコアな意味は確認しつつも、例文の意味はあまり深く考えることがありませんでした。不定詞・副詞的用法の例文の定番としては

I went to the station to see my uncle.

みたいなものがありますが、「そもそも叔父さんは駅で何をしてるんだろう?」というツッコミや、「このセリフをどんな状況で誰に伝えているんだろう?」という疑問を、みんなでスルーしたまま「そういうものだから」と練習させてきたように思います。

 英語を実際に使えるものにするためには、もっと生きた例文を読ませて、書かせて、考えさせて、練習させる必要があると思います。というか、せっかく練習させるなら、将来使うかもしれない英文の方がいいじゃないですか。

 前回からご紹介している『エイゴラボ』という教科書準拠ワークの例文は、そういう「生きた例文」ばかりです。例えば、今言っていた不定詞・副詞的用法だったらこんな感じ。

 文法の導入・整理のセクションもこんな感じ。

 これはこれで(例えばおじいさんとか)ツッコミどころもあるんですけど、それは英文の意味と場面を理解したうえでの「お遊び」のツッコミなわけで、むしろ意味のある刺激だと思います。

 さて、ここでポイントになってくるのが、イラストです。

 ワークのイラストって、これまでだったら"do my homework"を表すために「勉強している女の子」を絵にしたでしょう。それは、イラストの役割が単に語彙の視覚化だけだったから。現在形でも進行形でも過去形でも"do my homework"の絵は一緒です。

 一方、『エイゴラボ』のイラストの魅力は単に「ゆるかわ」なだけでなく、もはや一コマ漫画とも言える、「場面」が描かれていることです。さらに、発話している人だけ色塗りされていて、誰が誰に話しているかがわかるようになっています。宿題をしている場面ではなく、そのセリフを実際に言っている場面が描かれている、というわけです。

 漫画描きの端くれとして言わせてもらうと、1コマで場面を伝えるのってすごく難しいんです。それをうまく助けているのが、ぼそっとつぶやいているように見える日本語だと思います。これがあることで、登場人物たちの関係性や思いなどをうまく伝えて、世界を広げています。単純に漫画描きとしてもすごく参考になります。

 「問題集とかの穴埋めとか並べ替えは得意だけど、全然英語しゃべれません」という大人も多いように思いますが、せっかくたくさん練習してインプットしたはずの英文を、実際にいつどんな風に使えばいいかを考えてこなかったことが課題だと思います。もちろん、それは授業の中で、あるいは実際に誰かとコミュニケーションをする中で身に着けていくことだとは思いますが、ワークの中でも日頃から場面を考えながら英語にふれていくことで、感度が磨かれていくのではないかなと思います。