分析と整理と徹底と

 今年前半は「インプット期」と位置づけたものの、なかなか足を運べていなかった外部の研修会に、春休み初日、やっと参加することができました。東京飯田橋で開催された田尻悟郎先生(関西大学)の講座です。演題は「入試突破力とコミュニケーションの力の両立」です。

 田尻先生のお話を伺うのは3回めくらいでしょうか。技術的なお話もさることながら、(英語)教師としての子どもとの関わり方というか教師としての在り方について、考えさせられるエピソードが盛りだくさんです。特に冒頭の導入トークは、演題の周辺的なお話のように思わせながらも、最終的には先生が一番伝えたいことをダイレクトに語っていたのだな、と思います。

 田尻先生の分析力は半端ないです。本当にそうやって徹底して分析することがお好きなんだろうなぁ。教科書と入試をそれぞれ分析して、「ほら、コミュニケーションに必要な力を育てていれば、入試を解く力だって身につくはずでしょ」と訴えるわけですけど、そのデータは別に今回の講座のために分析したわけでもなく、田尻先生が目の前の生徒たちのために、学ぶべきことを分析して再整理した中学教師時代の知恵そのものなんだろうと思います。だから説得力があります。特に「複文を使わせたい」という具体的なねらいは、学習指導要領が「初歩的な英語を用いて自分の考えなどを話す」なんてあいまいなことを言ってるのより何倍も明確で、そのために授業で何をやるべきかを考える足がかりになります。そうやって、言語形式と機能と意味を行ったり来たりしながら「学ぶべきこと」を整理することが大切ですね。

 今回は教材会社正進社さん主催の講座でしたが、そんな中でも「教科書準拠ワークはなぜつまらないのか?」とか言ってしまう自由な田尻先生。授業や教材に求められることとして、

   STAGE1:量・くりかえし
   STAGE2:知的に楽しい活動
   STAGE3:統合的な活動

という3つのステージを想定されていて、たいていのワークはSTAGE1だから、教師はそれ以外の教材を作るべきだ、と説きます。もっとも、そんなワークでも授業内でうまく使うことで、STAGE2や3の役割を果たせるのではないか、とも思うし、新刊の『エイゴラボ』は2や3の要素を持ち合わせたワークなんじゃないかと思います。いずれにしても、新年度はワークやノートの活用法を考えることを個人的なテーマのひとつにしようと思っています。

 ちなみにもう一つ、かねてから自分の課題だと思っているのは「徹底」です。田尻先生だけでなく、すごいなぁと思う先生方の授業には「徹底」があります。「徹底してやらせる」「最後まで見とる」といった、フォロー体制がしっかりしています。新しいアイディアに飛びつくばかりでなく、やってみたことを見守ったり、効果を検証したり、今やっていることをしっかりやりきることを目標にしようと思っています。そんなことも改めて考えさせられた講座でした。

 会場には、これまでに一緒に英語教育を考え、語り合った仲間が何人もいました。久しぶりの再会で、いろいろなお話ができて、会のあとも楽しかったです。ああ、英語勉強しなきゃなぁと思ったので、少しずつ英語学習を再開しようと思います。NHKラジオ講座か、オーディオブック聴き放題アプリaudibleあたりを活用して、まずは「耳」を鍛え直そうかなと思っています。鉄は熱いうちに打たなくちゃ。