模擬授業を終えた学生たちへ

 3年生の英語科指導法における「1人10分ずつを5人でつないで1つの「50分授業」を作る模擬授業」が全班終わりました。いやー、面白かったです。

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 学生たちは、私が想像した以上に苦しみ、想像した以上に努力して、想像した以上に良い授業をしてくれました。そして何より、想像した以上に楽しんでいる様子が伺えました。

 ある時聞こえた「1人でやるなら、ここまで準備しなかったかもしれない」という声も本音だと思います。でも、同じ指導案を眺めていても、実際にやってみるとお互いのイメージが違って、「これ、つながるのか?」と急に不安になったようで、模擬授業教室を自分たちで何度も予約して練習した班もありました。

今回は大きく分けて2つ、「指導スキル」と「授業デザイン」という視点で模擬授業を評価しましたが、授業デザインで考えた自分の役割にあった教師の動きが体現できているか、ということも考えることができたようです。

 自分がやるのが、50分の中のどのパートなのか、を考えることもとても有意義だったようです。盛り上げる最初の10分なのか、次の活動の土台を作る復習の10分なのかによって、教師のテンションも役割も変わってきます。それがわかっていれば、1人で50分やるとしても、メリハリをつけて授業を組み立てることができると思います。

 さて、そんな中ですべての班に言える指導面での課題は、「形式への偏り」です。もっと「意味」を実感できるような授業デザインだったり例文選びができるとよかったと思います。たくさん言わせよう、練習させよう、という気持ちは感じられましたが、少し焦っていたようにも思います。

 英文の理解をそれに合うLINEスタンプを選ぶ活動で問うてくれたA班。そのアイデアを活かすためにも、活動の順番と手立てをさらに工夫したかったですね。

 暗唱に取り組んでくれたB班。スモールステップで丁寧だったけど、機械的な暗記を求めちゃうと意味と結びつかなくなっちゃうから注意が必要です。

 意味のやりとりを自然に伴うパタプラを考えてくれたC班。とはいえパタプラなので、それを受けて意味のやりとりを教師と生徒で楽しむと面白かったですね。

 そして単語から丁寧に本文の内容を読み取る活動を設定したD班。内容が把握できてから音読に取り組めば、もっと豊かな音読活動ができたと思います。

 一番シンプルな方法としては、教師が生徒と意味のある英語でのやりとりをする、ということがあります。いわゆるSmall Talkや新出文型の導入などのタイミングがチャンスです。生徒の英語での答えに驚いたり、喜んだり、怒ったりすることで、「自分の英語が通じている!」と実感してもらえるようにしたいですね。そんな中、最後の班が「授業の最初や最後に教師の『個人』を感じられるエピソードなどを入れて、授業を1つのストーリーに仕上げることもできる」なんて高等な要求にも応えてくれていたのが感激でした。

 グダグダの50分を見せられるくらいなら、充実した10分の積み上げが見たい、という私の我儘な要求に応えてくれてありがとうございました。教育実習事前指導のほうでは、もう少し長い時間の(1人での)模擬授業ができるかも。でも、ほんとうは模擬じゃなくて、ほんとうに誰かに教える経験をしておきたいよね。正確に言うと「教える」というより自分の声で「誰かを動かす」経験、かな。

 今回の10分が、1人での50分に、3週間の教育実習に、その先の長い教師としての日々の授業実践のほんとうの意味でのスタート地点になることを祈っています。