「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」を最後まで読んだので、全90ページある資料をスライド4枚にまとめてみた

 だんだんタイトルが長くなってますが、気にせずに。

 

 さて、タイトル通りですけど、第3編の評価事例も読みましたが、モヤモヤは残ったまま。でもそのままじゃ、教育実習に送り出す学生にどう伝えたらいいんだ、ということにもなるので、私なりに今回の資料を一度消化して、整理してみることにしました。

 

 で、まとめたのがこちら。

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 まぁ、そもそも4枚にまとめるので、かなり単純化してるし、そもそも恣意的なまとめになってますけど、4月に入ったら忙しくて読んでる暇もない、という先生方も多いと思うので、まずは概要を掴んでもらうためのまとめです。ざっくりなところはご容赦を。 

 

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 で、今回の評価の枠組みの全体像はこんな感じ。

 

 左上にあるように、今回の枠組みは「内容のまとまり(つまり5領域)」と「3つの観点」を掛け算したようなマトリクスが軸になります。これは先日の記事で表を紹介しましたね。

 

 疑問点のスライド(4枚目)でも書いたけど、そもそも、具体的な評価例を見ても、3つの観点の違いがわかりにくいんです。語尾が違うだけにも見える。

 

 これは今回の4枚のまとめとは別の表だけど、違いを色分けするとこんな感じ。

 

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 特に緑色の文末の表現で区別するしかないですね。

 

 で、たぶん文部科学省的には「主体的に学習に取り組む態度」こそが主役だ、と言っているのだと思いますが、この表を見る限り、評価としての新味は「思考・判断・表現」にあると思います。だから、あえて「思考・判断・表現」が主役になっている図になっています。

 

 もうひとつ。教師としてはもちろん生徒の「主体性」って大事だと思うんですけど、その「主体性」を教師が評価するとか、まして成績に入れちゃうのは大反対です。だから、少しでもこの観点が薄まって成績を左右しないようなものになればいいと思って、こういう図にしています。あしからず。

 

 いずれにしても、もうここからは文部科学省の手を離れて、生徒と向き合う先生方の手に委ねられたのです。先生方が、自分が生徒の力を伸ばすために意味ある評価を作り上げるために知恵を絞っていって欲しいです。今回のまとめは、そのヒントになればいいと思って作りました。

 

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 3枚目では、私が個人的にイイねと感じたポイントをまとめています。

 

 長期的なスパンで評価する、ということが繰り返し述べられています。他教科と違って、言語はこの時間に教えたことがこの時間内に定着するわけはないので、この考え方が広まることには大賛成です。合わせて、評価のタイミングを絞っていることも、無用に毎回「評価!評価!」と追われなくなる意味で重要です。

 

 毎回の授業で「今日の目標」みたいなことを確認することを要求されることもありますが、少なくともスキルの定着みたいなものを1時間の目標に掲げる必要はなくなるので、こういう言質が取れたことは意味があります。

 

 そして、文法と使用場面をつなげる、ということも繰り返し述べられています。これも基本的には賛成なのですが、資料では新しい文法を習ったその時間内に「その文法を使えとは言わずに、でも活動の中で使うように導いて使わせろ」みたいなことが書いてあって、それはちょっと急ぎ過ぎじゃないの?と思いました。長期スパンって言ってるのにね。

 

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 最後は疑問点です。

 

 1番目については、前回の記事で書きました。上でも少し書いてますね。

 

 2番目も変ですよね。突然Can-Do推しが始まったけど、あれは最終的に評定を出さなければならない総括的評価である学校評価には馴染まないよね、という声もありましたが、これまでは「外国語表現の能力」と「外国語理解の能力」というスキル系の2観点のみCan-do対応することで、なんとか整合性を持たせていました。

 

 今回の資料では、結構詳しく評定算出までのプロセスを例示してるので、こういうのを見ちゃうと、「あれ?最終的にbが取れたならbが評価なんじゃないの?」と思ってしまいます。もうそんなに到達度評価が好きなら、いっそ通知表にCEFR段階を載せちゃえばいいのに。

 

 3番目は、評価資料全体を読んだ私の印象です。評価計画づくりのプロセスが大変網羅的に詳しく書いてくれているけど、「実際はここでは書いてないけど読むことも評価するからね」みたいな断り書きが多くて、実際に教師が全体の評価計画を立てたら、90ページどころじゃ済まなくなるんじゃないの?という不安もあります。そして、その評価計画の中では、地味に目の前のテクストを読んで意味を理解する、というサブスキル(というかある意味メインスキル)の指導や評価を考える余裕がなくなっちゃうんじゃないか、と思うんです。

 

 若い世代の先生方が増えてきて、こういう資料もずいぶん丁寧に書かれているようにも思います。同時に、そのまま使えるような評価規準をただ載せるだけでは現場の指導と評価は変わらないから、先生方に考えてもらうような資料にしようという意図も垣間見れます。

 

 私も賛成できる部分と現場にいたら自分なりに工夫して対応しただろうなという部分があります。それぞれの先生方が同じだと思います。繰り返しますが、「評価」は文部科学省の直接手の及ばない、教室の中にあります。先生方が、生徒のためにどのうように工夫して、これらの評価の観点や規準を「育てて」いくかが重要です。

 

 スタートするまでちょうど1年。スタートして最初の成績が出るまで1年と3ヶ月くらい。そして、その先の何年間かで、少しずつ定まっていくものかなと思うので、ただお上からの伝達講習を待っているのではなく、多くの先生方が意見や知恵を出し合っていって欲しいと思います。そのための時間を、ちゃんと先生方にください! そういう意味でも休校措置で少しでも時間のあった3月に研修できるように資料をもっと早く公開して欲しかったです。

 

 原典の国立教育政策研究所の資料はこちら。

www.nier.go.jp