ふたつのこと

 同時にふたつのことができません。

 その昔、ピアノを6年間習ったけど、練習も嫌いでよくサボってたのを差し引いても、それだけやってバイエル上下巻しか終わらなかったのは、やはりセンスがなかったんだろうなぁ、とは思います。ソルフェージュとかはすごく得意だったので、音楽的な素養がまったくなかったわけではなさそうだから、何かしら別に課題があったんだと思います。

 まず思い浮かぶのは身体運動的な意味で、右手と左手が別のことをするというのが、根本的に苦手だということ。ピアノも片手ずつではすぐにクリアできるのに、両手でとなると一気にハードルが高くなる。それもある意味運動神経の一部なのかもしれないけど、自分の注意リソースがちゃんと両方に配分されてないんだと思います。高校生の時に懲りずにギターに手を出してますが、同様に挫折しています。

 同じようなことは、料理にも言えます。

 おかずを作りながら味噌汁を作る、なんて芸当がぼくにはできません。味噌汁を作り、そのあとおかずを作る。食べる時には、また味噌汁を温める。のんびりしてるとおかずも冷めてしまう。悪循環。並行してできれば効率がいいのになぁ。だから、すっかり料理をしなくなりました。

 楽譜を見ながら弾くのが苦手なのも、同じようなことは理由からでしょう。だから何度も練習して、指が勝手に動くようにするしかありませんでした。でもこういう人は、本質的な意味では「ピアノが弾ける」とは言えませんよね。

 ピアノが苦手なもうひとつの原因は、"Undo"ができない、ということ。いや、普通そんなこと考えないでしょうけど、絵とか文章は得意なのは、失敗してもやり直したり、消したりできることが、すごく安心感を与えているんだと思います。ピアノは、失敗したらその音が虚しく響きます。まぁ多少ごまかせるけど、その時間は戻らない。さっきの料理も同じですね。「ハンバーグ、ちょっと焼き過ぎたので"Undo"で元に戻そう!」とはできない。その緊張感が、さらにぼくからリソースを奪っていくんだと思います。

 実は、同じようなことが原因だと思うのですが、最近英語が読めません&話せません。個別の正しい発音を意識すると、プロソディーがめちゃくちゃになる。スラスラ読もうとすると、今度は発音がいい加減になる。まぁ、誰でも少なからずそうでしょうけど、ぼくの場合それが極端にひどい。少し前まではベラベラ好き勝手にしゃべれてたのは、きっと何も他に意識してなかったんでしょうね。きっとすごい英語だったんだと思います。

 でも、これは自分自身が乗り越えなくちゃなぁ。

 まずは正しい発音がある程度自動化されれば、リソースは別のところに注げるはず。だから発音の練習をしっかりやることが大事なんだと思います。

 あとは単純にプレッシャーに押しつぶされない強い精神力も身につけないとなぁ。自分の力を発揮できるかどうかも、「力」だと思うので。