「コミュニケーションへの関心意欲態度」を斬る

 みんながあまり語りたがらない「コミュニケーションへの関心意欲態度」の評価について考えてみようと思います。

 たぶんみんな実は一番気になってるけど、「実際にどうやってつけているか」ってほとんど話題にならないですよね。提出物などで「意欲」を測っていた時代はよかったんですが、他教科のように「国語への関心意欲態度」ではなく英語だけ「コミュニケーションへの関心意欲態度」という不思議な観点を設定されているので、みなさん苦労されているところだと思います。(まぁ「授業は教師と生徒とのコミュニケーションだ」と言えば無理も通りそうですけどw)

 じゃ、どうやってつけるのか?

 国立教育政策研究所が作った「評価規準の作成のための参考資料」を見ると、「評価規準に盛り込むべき事項」として挙げられているものには、「言語活動に積極的に取り組んでいる」「様々な工夫をして読み続けようとしている」などがあります。「積極性」と「工夫」と「継続性」がポイントのようです。

 さらに詳しく見ると、「評価規準の設定例」として、

  1. 相づちをうったりして相手の話に関心を持って聞いている。
  2. 間違うことを恐れず積極的に書いている。
  3. 辞書を活用して読んでいる。
  4. つなぎ言葉を用いるなどして話を続けている。

 といった例が紹介されています。定期的に言語活動中に生徒の様子を「やっている」「やっていない」の○×でチェックして、それを蓄積していって、「10回中9回やっていたからA」のように評価をつけるのが好ましい、みたいな話も某所で聞きました。

 でも言語活動への取り組み度合いって、正直「言語活動そのものの魅力や必要性」とか、もっというと「教師の指導力」や「学級の状態」次第であって、どのくらい生徒の責任なのかは疑問が残ります。

 そういう意味では、もう少し「スキル」的な位置づけにしてもらった方が、個人的にはすっきりします。

 「コミュニケーションへの関心意欲態度」の達成度合いを表現する際には、「○○できる」とかではなく、「○○している」とか「○○しようとしている」という文言を使うように指導されます。「関心意欲態度は知識やスキルじゃないんだから」というのが理由のようですが、困った時に辞書を自分で引いたり、会話の中で自然に相づちを使ったり「している」状態を作るためには、そういうことが「できる」状態にしないといけないわけで、立派に「スキル」や「知識」だと思うんですよね。

 そういう意味では、日頃の集団生活の中で円滑に人間関係づくりができるように支援する「ソーシャルスキルレーニング」みたいな特別活動でやっているような実践に近いような気もします。教師が「相づち」のデモンストレーションをして、ペアでロールプレイをして、フィードバックをするなんて、英語の授業と変わらないですよね。
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 とはいえ、そういったスキルが定着しているか、適切な場面で使えるかどうかを観察したり測定したりするのは難しそうです。Sustainabilityも評価を考える上で大きな課題ですね。

 さて、この「評価規準の設定例」を眺めていて気になった、少し意地悪な屁理屈を2点ばかり。

 1つめは「書くこと」について。

 「積極的に書いている」って一体どんな状態なんでしょうか。たくさん英語を書いている状態? たくさん書こうとしてもがいている状態?

 だってもし「話せないけど話そうとしている」ことが「意欲」と解釈してもらえるのなら、「書けないけど書こうとしている」ことも評価してもらえるはずですよね? しかしそうなると、「面接によるライティングテスト」とかやって、生徒が困った時に辞書を引いているか、頭をかきむしって悩んでる姿を見て評価しなければならなくなるのでしょうか?

 2つめは「間違いを恐れない」ということ。

 「間違いを恐れずに」という文言が「積極性がある状態」を示す指標として使われがちですけど、これって「間違いを犯しているけど会話を継続している」という状態が顕在化しないと測定できないですよね? ということは、「間違いをしない」だけの熟達度を持った生徒は不利じゃないですか?(笑) もっと言えば、コミュニケーションを正常に成立させたいからこそ、「間違いを恐れる」生徒だっているかもしれないのに。

 そのうち、「学校ではな、関心意欲態度は間違いをしないと測定してもらえないから、会話テストではわざと間違えてがんばってる様子を表現するように」なんて指導する塾だって出てきかねないですよね。(実際、「挙手の回数」を成績に入れる先生が居たときには、「わからなくてもいいから手をあげろ」という指導をしていたローカル塾はありました)

 いや、かなり意地の悪い見方をしてますけど、真面目にこの部分の評価を考えている先生ほど、よくわからなくなってしまって悩んでいるんじゃないかなと思ってあえて書いてみました。なんだかんだ、英語の成績の1/4を占める重大なポイントなんですから、もう少しみんな話題にしてくれたらいいなぁと思います。

 サークルでも今度取り上げてみようかな。

 あ、そういえば、今月号の「英語教育」誌は「評価特集」でしたね。まぁこの辺のことはさすがに載ってないかとは思いますが、少し頭が評価モードなので、明日にでも読んでみようかな。

英語教育 2011年 05月号 [雑誌]

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