2011年07月のご報告:新教科書雑感

 昨日、7月例会をおこないました。学期末でお忙しい時期でしたので少人数でしたが、そうやって駆けつけてくださる方々に支えられて、なんとか会を継続できています。ありがとうございました。

 さて、今回は「新教科書を考える」ということで、各社の教科書を眺めながら、どんなところが新しくなっているかを検討しました。各社それぞれ工夫を凝らしていますが、共通しているのと感じたのは2点。

(1)そのレッスン、プログラムを終えるとどんな力がつくのかをトビラページやページの上に明示している。

 いわゆるCanDoリスト風に、チェックボックスがついている教科書もあります。あるいは、もう少し長いスパンでレッスン1〜レッスン3までを1つのユニットととらえて、そこまで終わると「友達の紹介ができるようになる」みたいに、具体的な目標や目的を示しているものもあります。関連して、実際に友達を紹介するレポートを書かせるようなプロジェクト的なページを用意している教科書も増えました。

(2)4技能を統合的に、総合的に育成できるように、教科書内のアクティビティーが充実している。

 極端な例では、左側ページがListening、Speakingなどのアクティビティーだけ、という教科書もあります(右側は本文とWritingタスク) つまり、教科書に載っているアクティビティーを順番にやっていけば、それだけでも十分な活動量を確保できるつくりになっています。

 こういった目標の提示やアクティビティーの準備は、これまで我々英語教師のお仕事でした。それが、今回は教科書に含まれている。このことの意味は、ちょっと真剣に考えなければならないことのように思います。

 「教科書をどう扱うか」に悩んでいる先生や文法項目の定着のためのアクティビティーを毎回毎回用意するのに苦労している先生が多かったのも事実ですから、そういった人たちに一定の方向性を示し、準備する負担を軽減することができる、とも考えられます。これから若い教員が一気に増える時期が来ることも念頭においているのかもしれません。

 一方で、「え、それこそが、英語教師の腕の見せどころ、というか楽しいところなのになぁ…」と感じてしまったのも事実です。確かに教師は日々忙しい。でも誰かがその忙しさを軽減してくれるのだとしたら、教材研究「以外」のところがまず先に軽減されるべきじゃないのかな、とも思います。

 本来学習指導要領や教科書といった公的なものは、明確な目標(とそれに準じた具体的な評価基準)と良質な学習素材を示してくれれば十分なのではないかと思っています。そんな素材を「どう」料理して、生徒の力を「どう」伸ばすかは、あくまで教師の仕事であるべきだと思います。「どう」の部分である「教え方」まで強制しようとする最近の流れに、ちょっと違和感も感じています。

 そんな中、私たちができることとしては、教科書が用意してくれた素材やタスクをよく吟味して、使うものは使う、別の活動で代替するものは代替する、という取捨選択することだと思います。そういったタスクに新出単語が含まれちゃってることもあるのがちょっとやっかいですが、教師が「選ぶ」ことがこれまで以上に大切になるかと思います。

 副教材の選び方も大きく変わってくるでしょうね。毎ページリスニング問題がついてるんだから、別に問題集を買う必要はないと考える人もいるでしょう。じゃあ代わりに何を生徒に持たせるか。そういった話も今後サークルで扱ってみたいなと考えています。