『これからの英語の文字指導ー書きやすく 読みやすく』手島良(研究社)

 手島良先生から新著『これからの英語の文字指導』(研究社)をご恵贈いただきました。直接の面識はないものの、ブログや共通する知人(私からすればお師匠)などを通して私の存在を知ってくださっていたようで、このたびは私にまでお心遣いをいただきました。ありがとうございます。

これからの英語の文字指導 ??書きやすく 読みやすく

これからの英語の文字指導 ??書きやすく 読みやすく

 

  幸運なことにずいぶん早い段階で手に入れていたにもかかわらず、ご紹介するのが遅くなってしまって申し訳ないです。まだ全部は読み終わってませんが、現段階での感想などを綴っておこうと思います。とはいえ、焦って紹介する必要がないほど、普遍的な内容がつまった本だとも思います。

 手島先生の前著「発音本」も重宝していたのですが、今回の「文字本」も、英語教師必携の1冊になると思います。今までなんとなく書かせていた英語の文字が、生徒にとってはこれだけ高い壁になっていて、その壁を超えるための方策がこんなにたくさんあるのだと改めて気付かされました。先日小学校で文字指導をした際には、(自己流ではありましたが)鉛筆の動かし方のトレーニングをやってみたのですが、これがとても面白かった! この本ではそんなトレーニング法が段階的にいくつも提案されていて、そのためのワークシートも全部ダウンロードできます。すごい。

 発音とか文字みたいなことって、マニアックとか些末なことではなくて、結局そういうところでつまづいている学習者が多いわけで、素地とか基礎とかいうなら、そういうのをしっかりやるべきですよね。そして、そういう指導ができる教師が小中学校には必要です。今後、文字指導が本格的に小学校段階に降りていくのだとしたら、小学校の先生にもぜひ読んでいただきたいです。本当はそういう専門性を持った人が、小学校で文字指導するべきだと私は思っています。でも普段小1にひらがなを教えている小学校の先生方なら、興味を持って読める本だと思います。

 個人的にはフォントについてのページが大変興味深いです。私のように元々フォント好きとかでなくても、学習者のことを考えてワークシートにComic Sansとかを使ってる先生方は多いと思うので、一歩踏み込んで(有料フォントですが)Sassoonなどに挑戦してもらえたら嬉しいです。

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 ホントはそういう有料フォントをちゃんと学校の教師用コンピュータにインストールするような「支援」こそ、行政に期待したいところですよね。とはいえ、それだってまずは教師側から要請しないと実現しないことだと思うので、教師がそういう知識を持っていることが大切だと思います。

  ちなみに以前から松井先生にSassoon系フォントをオススメしていただいていたのですが、私は買う際に松井先生いわく「妥協の産物」であるSassoon Sansを選んでしまいました。他のSassoon系は小文字fの上下が長かったり、生徒に書かせている字体とは異なると思ったからです。その点USは、巷にあふれる、教師が生徒に実際書かせている字体に一番近いからこれなら生徒が戸惑わないだろうという「配慮」が働いたんですけど、そもそも生徒に書かせる字体を変えないかそういう余計な配慮がいつまでも必要になるんだな、と気づきました。本末転倒でした。

 そういう意味では、この本を読んだ先生方が市販の残念なペンマンシップ教材に見切りをつけて、手島先生のワークシートをダウンロードして使うようになったら、やがて市販の教材も「ちゃんとしたもの」になっていくんじゃないかな、と思います。良貨が悪貨に駆逐される、その前に。

 この本を通して「専門性」の大切さを感じました。この分野のことはこの人に聞け、と言えてしまうほどの知識の深さと技能の高さ、そしてそれをわかりやすく伝える力こそ「専門性」と呼べるものだと思います。手島先生の「専門性」が詰まった1冊だと思います。自分には何かそういうものがあるのか。将来そう言えるようになるものを持てるのか。考えさせられた1冊でした。とはいえ、文字指導のあれこれは、特殊なスキルではなく、まさに教師としてのミニマル・エッセンシャルなんだと思います。勉強になりました。

 ちなみに手島先生の前著「発音本」はこちら。

NHKCD BOOK 新基礎英語3 英語の発音・ルールブック つづりで身につく発音のコツ (NHK CD BOOK―新基礎英語)

NHKCD BOOK 新基礎英語3 英語の発音・ルールブック つづりで身につく発音のコツ (NHK CD BOOK―新基礎英語)